麻布中学校 科目 算数 国語 理科 社会 合計
配点 60点 60点 40点 40点 200点
時間 60分 60分 50分 50分  

【算数】

〔1〕人口密度の比       難易度B
〔2〕四捨五入・範囲      難易度B
〔3〕速さの文章題・周期性   難易度C
〔4〕過不足算・範囲      難易度C
〔5〕場合の数・図形の書き出し 難易度B
〔6〕図形の移動・周期     難易度C

90年代後半,難易度を落としていた時期には 「算数では差がつかない,単なるミス勝負」という年もあったが, 2001年あたりから「基礎学力と発想力のバランス重視」の出題, という方向性が固まってきた。 問題の難易度についても, 「誰でも解ける」問題はほとんど出題されなくなったため, 算数でもかなりの得点差がついていると思われる。 ただし問題の分量・設問数などはこの5年でもブレている。 良問が多かったが内容がやや軽すぎた2002年, 設問数が全部で9しかなく発想力重視の2003年, 規則性・周期性の問題ばかりで設問数が19もあった2004年,という具合。 さて今年はというと,問題内容・難易度バランス・分量の三拍子がそろった傑作である。 以下,内容に言及していく。

〔1〕人口密度って,要は濃度のことなのね,という, ただそれだけの問題なのだが, 比の扱いがわかっているかわかっていないかが一発でわかる良問。

〔2〕4番目が50,5番目が70の条件でキレイに範囲が1通りに絞り込めるのだが, どれか1個の条件で出た範囲を他にあてはめて検証していく手もあり。 問題文を読んで自分の頭で考えることができる受験生にとっては簡単で, 塾で習ったことしかできない受験生には難しい問題。

〔3〕速さの文章題,というよりは点の移動と周期性の問題ととらえた方がよさそうな問題。 ポイントは(2)で,「図5」の状態から最後尾になるのはC⇒B⇒A⇒@⇒I⇒Hの順で, 追い越しを始めるのはHがA車線の最後尾に来たときになることに注意したい。 これも泥沼にハマる子が少なくなかろう。 ちなみに今年度では浦和明の星(一次)の〔6〕に類似の設定の出題がある。

〔4〕過不足算だが,これも〔2〕と同様に不等式的な処理が絡む。 往年の武蔵を思わせる難問(武蔵なら最後の仕上げに倍数・約数関係が出てくるところだが, この問題は範囲を絞っておしまい)だ。 中学数学の一次不等式を使えば式でキレイに処理できるが, (2)は数値を代入して不適解を検証するのが実戦的だろう。

〔5〕本校の大好きな「正三角形の格子」である。 練習の(1),調べて計算の(2),書き出しの(3)という具合にバラエティに富む構成。 標準レベルではあるが,このぐらいがかえって差がつきそうだ。 (3)では,1通りにつき1点,というような配点なのか, 完答で何点というような配点なのか,採点方法には興味がある。

〔6〕図形の回転数を問う問題。 問題文が長いので設定を飲み込むまでに時間がかかるし, 後半の設問は下の台も回るのでゴチャゴチャしてしまった受験生も多いだろう。 本質を見抜いて,一気に最後まで駆け抜けることができた受験生とは,ここで大差がつく。

さて,上記のように,今年の麻布は内容も幅広く, 難易度も受かるべき生徒とそうでない生徒をくっきりと色分けできる妥当なレベル設定であった。 算数で得点を稼がなければならない受験生は 〔3〕,〔4〕,〔6〕のそれぞれ後半の設問で勝負をかけるべし。 逆に他の科目で勝負したい生徒は,Bレベルの問題をきちんととる, Cレベルの問題の前半の設問をとる, という守りの戦略に徹しよう。 合格者最低点は106点ということなので, 算数では5割強はキープしておきたいが, 守りの戦略でも十分そのラインに届く。 とはいえ「攻めるは易く,守るは難し」である。 日ごろから難度の高い問題にも実戦形式で取り組み, 「守りの練習」を積むことが必要である。

【国語】

物語…重松清「タオル」 約6200字 小問数12(記述問題数8)

2004年『オール読み物』10月号(文藝春秋社)の 「特集少年時代・少女時代」に掲載された短編が題材。 シゲキヨこと重松清は、 十〜十五歳の少年少女を主人公とする短編を数多く書いている直木賞受賞作家。 中学入試でもよく採りあげられる。 器用な人で、都会の現代っ子から田舎の子、 落ちこぼれたような子、吹きこぼれたような子、 家庭に問題がある子、学校でイジメにあっている子……、 考えつく限りのシチュエーションの短編を手際よく作品化する。 現代の新児童文学のけん引役でもあり、名手と言えるだろう。

逆説的になるが、だからこそある意味麻布が出題しなくても……という気がする。 麻布の入試問題を、毎年期待をこめて待ち受け、 塾生に深い答を書いて欲しいと願って添削を繰り返す側としては、 名手シゲキヨの手腕の予定調和的感触に「麻布らしくないもの」を感じるのだ。 そうした器用さから遠いもの、無垢で愚直なたった一つの輝きを掘り起こしていってほしい……。 そんな風につい願ってしまうのが麻布の魅力でもある。

分析に入ろう。 今回の題材のキーワードは「お葬式」「漁師」「タオル」である。 あら筋は次のようなもの。

おととい普段どおり漁に出ていた祖父が脳溢血で急死してしまった。 あっというまのことだったから、お別れをいう間もなく、 家には近所のおばさんやら町内の世話役やらが来て、 お葬式の準備におおわらわとなる。 小学五年生の少年は、家に落ちつける場所もなく涙も出ず、困惑する。 そこへ昔祖父を「地元で一番の腕を持つ一本釣りの漁師」として取材した記者が弔問に来る。 彼の世話をまかされた少年は、彼から祖父の願い(三代続けて漁師になる)を伝えられ、 漁師姿の祖父と父の写真をみせてもらう。 少年はふと庭で物干しにゆれるタオルに気づく。 祖父は毎日それを額に巻いて漁に出、帰るとそこに干して家に入っていたのだった。 今、持ち主を失ったタオルを見て、少年は改めて祖父の死を実感する。 少年はなきがらの額にタオルを巻いた。 すると初めて熱いものがこみ上げるのを感じた。 流れた涙には祖父や父と同じ潮のにおいがした……。

設問形式は例年どおり。 解答欄の8割が記述問題で全記述文字数は500〜600字程度。 本文量は約6200字で、昨年から1000字前後減って軽め。 みかけの設問数は去年が問12まで、 今年が問11までなので変化無しとも思える。 だが、設問レベルは平易。深くつっこんだ設問は見当たらない。

代わりに最後二問(問11の1と2)の記述スペースが広く、 書く分量は重い(1は6行…約150字、2は5行…約120字)。 この問はそれまでの設問の「まとめ問題」なので、 内容的には問10までの繰り返しだ。 「漁師になる自分」の意識の芽生えが最後の1行に集約されていることへの気づきがあれば、 あとは「まとめあげの技法(秘)」の訓練の成果を発揮するだけ。 ただし訓練されていないとキビシイ。

「お葬式で泣けない」という誰もが一度は経験するとまどいを、 シンプルな構成とわかりやすい人物設定で書いた題材なので、 読解はひじょうに容易だ。 だから差は「読み取ったものをどれだけ書けるか」……その1点にしかない。 書く、書く、書く、とにかく書く……。 読解は精確に、記述は深くエレガントに。 君も、麻布特訓で書いてみる?

【理科】

〔1〕昆虫とエビ・カニの仲間との脱皮の仕方の違いについて
〔2〕温泉にまつわる総合問題
〔3〕田中さんが発明した「タンパク質の飛行時間型質量分析法」について
〔4〕容器から流れ出る水の勢いの変化について

昨年に比べ記述部分が少なく、 また解き方の方針を立てやすい設問が多かった反面、 前半の設問を間違えるとそれに続く設問も間違えてしまう危険をはらんでいる 問題設定も多く含まれていたため、 意外に点差は開いたのではないでしょうか。 ここ数年、大問数は4題と変わりませんが、 以下に示すように、総設問数、記述式解答数は安定していません。 しかし、1つの大きなテーマに沿いながら、 さまざまな知識を結びつけて考えさせていく形式はまったく変わっていません。

  • 平成17年:設問総数26問 記述解答数6問(23%) 代表問:タンパク質の質量分析法
  • 平成16年:設問総数32問 記述解答数14問(44%) 代表問:遺伝子情報の読み取り方・燃料電池
  • 平成15年:設問総数20問 記述解答数8問(40%) 代表問:遺伝の法則・液状化現象
  • 平成14年:設問総数32問 記述解答数6問(19%) 代表問:狂牛病・ガリレオの物体の落下実験

〔1〕は、頻出分野の「動物の進化と分類」に関する出題で、 昆虫と違い甲殻類の仲間には親になっても脱皮を繰り返し大きくなっていくことや、 脱皮した直後は皮膚が柔らかく無防備なため、 抜け殻を食べずにすぐにその場を離れることなどを記述させています。

〔2〕は都内の温泉ブームから出題されたのか、 麻布十番温泉の紹介から始まり、 温泉に色がついている理由や温泉の成分が変わる原因などを聞いています。

〔3〕が、今年最も麻布らしい出題で、 2002年に田中さんがノーベル賞を受賞した研究テーマの 「タンパク質の質量分析」に関するものです。 昨今話題の“ゲノム”にまつわるテーマに沿った出題は、 上記のように4年連続しています。 記号選択が中心ですが、田中さんの研究成果を紹介しながら、 小学生にもわかりやすいように設問がうまく織りこまれています。 ちなみに受賞理由は、いろいろなタンパク質が混ざっていても、 簡単にそれらの種類と重量比がわかるという画期的な分析方法の原理を発明したことです。 田中さんが発明した飛行時間型分析法は、 タンパク質という大きくて扱いにくい粒を簡単に見分けることができる方法で、 細胞内のタンパク質の研究や医療検査技術の開発で大いに注目されています。 出題ではそこまで深くは触れず、 粒の重いものほど飛ぶのに時間がかかるという簡単な比較実験の結果から、 タンパク質の重量比と数量比を計算させています。 題意に沿い手順を踏んでいけば、 さほど苦労せずに正解にたどり着けますが、 入学後はこういった興味深い科学の授業が展開されるという予告を、 入試問題を通して受験生に発信している麻布らしい出題でした。

〔4〕は他校の入試問題でもよく扱われているテーマで、 ペットボトルの底に開けた穴から流れ出る水の勢いが、 ふたが無い場合と、 ペットボトル内の水面下まで届くストロー付のふたをしめた場合とどうちがうか、 実験データを読み取り考察するものです。 〔3〕と同様に、記号選択形式の設問が多いのですが、 設問どうしが連携している為、 前半の設問でミスを犯し失点を重ねてしまった受験生もいたのではないでしょうか。

最新の科学ネタをテーマにした出題が多いため、 一度でも耳にしたことがある話題が出題されたならば、 より一層とりくみやすいことは間違いありません。 本校を志望するのなら、日頃からさまざまな科学ネタに興味を持ち、 雑誌やテレビ、インターネットなどで、面白そうな話に出会ったら、 じっくり味わってみることが大切です。 なぜそうなるのか掘り下げて考える姿勢を心がけなければいけません。

【社会】

時間について 解答欄数19(記述9)

テーマは「時間」。この「時間」に人々の生活の変容や経済活動の進展を絡めている。

リード文が1ページ〜6ページまで。 これをゆっくりと読んでいては答案作りが出来ないが 全ての受験生に「教養」という観点からぜひ読んでいただきたい、 平易かつ奥の、深みのある滋味溢れる文章である。 (こういう文章で「総合学習」なるものを組み立てれば、 昨今の廃止だ存続だなど、幼稚な議論を大の大人がしなくても済むのにと思う。)

ただし設問それ自体は「これが麻布だ、教養だ」という 大上段あるいは力作というよりは手を抜くところは抜いて 受験生に点を取らせるところは取らせるという工夫(あるいは“あきらめ”?)というか、 本格派から技巧派への変身の趣を呈している。

問1、2のサービス問題は別として問3の鉄道の「定時運行」 問4の相撲の仕切り時間の制限などは 多くの受験生に何となくは答らしきものが頭に浮かぶが 文章にして制限マス内に格好よく入れることが出来るか、 さりげない習練が身についているかがポイント。 制限時間内に立つ貴闘力(大嶽親方)、 更に更にさかのぼって、 志村アナウンサー出羽ノ海親方のやり取りとか思い出す受験生は……いないよね。 オレもタイムスリップして麻布受けたい。

問5、40年間の睡眠の減少のテレビ以外の原因を産業構造の変化を頭に入れて書く。 ワールドワイドとまではいかなくとも宇宙中継 (日本最初のこれは、なんとビートルズアメリカアメリカ公演実況生中継が ケネディ暗殺になっちゃった話を授業で楽しく?やりました) オリンピック・ワールドカップで体感している子も多いけど、 いざ文章になると、これも習練かな。

問6の不定時法。 啓明舎では国語でやったんだけど日の出と共に起き、 働き、日の入りと共に就寝に至る過程へと、 と自然との共生的願望は抜きがたく人は有していると思うが……。

問11は軍人が戦争で時計を必要とすることになった主な理由。 現代に於いても戦争で遭遇戦は避けられないけど、 作戦計画などという言葉がぱっと頭に浮かぶ子とそうでない子の勝敗は論を待たない。

問12、電波時計と人口衛星を使い現在の位置を特定できる技術を使った機械を答えよ。 カーナビでもケータイでも。社会音痴でなければ楽々。

問13「3C時代」がもたらした変化。 家事労働が楽になった程度じゃなく、ここは踏み込んで男女共同参画社会くらい書いてほしい。 そして麻布名物の大トリ、140字以上200字以内で。 「分秒単位の時間にしたがった社会がいったんできると」に続くように 本文全体をよく読んで書け。 現代社会に対するアップトゥデイトな関心もさることながら、 文章力・文章力。雑多な知識が頭に散乱していてもそれを論理的に統べる術を持たない子はお呼びでない。 教養そして国語力。 そうです国語力のない子は難関校には通じないのであります。 小西さんも出羽ノ海さんも「なんと申しましょうか。」そうおっしゃっています。