【算数】
平成9年度以降、大問3問構成を続けてきたが、今年は4問。 さらに〔1〕は開成では珍しい小問集合と、 出題数(出題分野)が増えた分だけ、1問1問のボリュームは軽くなった。 「都会的でスマートな問題」と評するか、 「開成の『匂い』がしない」と落胆するかは人それぞれだが、 個人的には後者に与したいところだ。 とはいえ1問1問をみれば、 開成志望者に限らず一度は取り組んでおきたい、 「学習効果の高い」良問である。 まずは内容をみていこう。 〔1〕(2)は不正確な2つの時計の長針と短針の角度、 つまり時計算と速さの比の複合問題。 一般の受験生に解かせると正答率は低いだろう。 ただし開成志望者にとっては絶対に落とせない「おなじみの1題」。 〔2〕は5種類の硬貨を分別し、 一定枚数の硬貨がたまると下に落ちていく装置の問題。 ただ単に「3数の合計が9になる組合せ」を書き出すだけなのだが、 見かけの「面白さ」に惑わされて難しく考えすぎると失敗する。 「整数の分解」と「約束記号」(ルールを読み取る問題)は開成算数のメインテーマだが、 この問題は「ルール」がシンプルなので、これも大半の受験生はクリアできただろう。 〔3〕円と正多角形を組み合わせた美しい模様の求積。 補助線をひいて図形を変形すれば、美しく解くことができる、 中学入試らしい珠玉の1題だが、ここは開成お得意の立体図形か図形の移動で、 受験生の前に立ちはだかってほしかった。 答えが美しい整数解になるところも開成らしくないし…。 〔4〕3つのグループが徒歩と自動車をうまく乗り継いで最短時間で目的地に向かう問題。 グループ2つの問題はどの問題集にも登場する「典型題」だし、 その応用形もすでに複数の学校で出題されている。 「速さの比」も開成算数の超頻出分野だから、 ここで「平行四辺形型の進行グラフ」が頭に浮かばなかった受験生は 「お勉強不足」と謗られても仕方ないだろう。 ただし(3)の「グラフをかく問題」は細かい目盛りが与えられているのに、 答えが目盛りの幅とズレてしまう(なんのための目盛りなの?)ところが「開成流(?)」。 ずっとスッキリした答えの問題が続いてきたので、ここでちょっと焦るかも知れない。 過去3年間の受験者(全体)平均は43点前後を推移していたが、 今年は50.6点。合格者平均は60点・60点・51点ときて、 今年はなんと65.8点(約78%)! 算数に強い関西勢(灘受験生)の流入の影響もあったとはいえ、 トップ校の入試問題としては、やはり「軽すぎた」。 「受験者平均−合格者平均=15点」だから、 数値上は4教科のなかで算数がもっとも差が開いた(合否に影響した)ことになる。 しかし実際には、満点近い答案を書いた上位受験生と、 「記念受験」組のあいだに大きな「溝」があり(なにせ志願者数17%増だからね)、 上位受験生だけを母集団としてみたときには 算数ではあまり差が開かなかったのではないか(あくまでも推測だが)。 つまり「算数勝負」の受験生にとっては不運な出題であったと思われる。 ただしいつも口を酸っぱくして語っていることだが、 毎年、フタをあけてみないとわからないのが開成の入試。 平成13年度の最強レベルの出題を覚悟して、受験勉強に取り組むことをお薦めしておきます。 【国語】
やはり去年の開成国語は文字通り「空前絶後」だったのか? 【9000字を超える1題長文】【ぶっとび戯作文】【傍線のない本文】… 擬古文あり・下ネタあり・CMコピーあり…。 何でもあり〜の、の超長文の中を道しるべ(傍線)もなく、 当てどなくさまよう様相だった去年。 それに比べれば今年は何という穏やかさ。 暴風雨のなか吹き飛ばされずに「足踏ん張ったモンが勝ち!」だった去年から見れば、今年は春風。 問題構成も98年以降の定番、 【短めの説明文+物語】の2題構成に戻った。 本文に傍線もふられた。超難問は見あたらなかった。 それなら、易しかったのか? 国語で差はつかなかったのだろうか? いやいや、それがお前さん。 受験し終えた生徒の話では「後ろから集められた答案、記述が全部埋まってなかったよ。 僕はだいじょぶだったけど」というようす。 実は大問おのおのにクセがありました。 まず〔一〕。犬養道子「本 起源と役割をさぐる」(岩波ジュニア新書04年6月刊)第3章からの出題。 ソクラテス最期の講義録となったプラトン著『パイドン』の一節をてこにした論説。 終わりの二段落「潮にもてあそばれようとも(誤解や誤読をされようとも)思想は分けられる(分配される)ものであり、 ことばによって人々みなの共同の財産になって行く」(要約)を押さえる。 ただ、しょっぱなの問一がクセモノ。 「思想が分けられる場合と品物が分けられる場合の違いを四十字以内で二つ書け」…… 一つは第四段落に「品物は分けてしまえば残らないが思想は違う」とある。 が、もう一つが見つからない。実は答は筆者の頭の中に。 「受け取る側の、分配における均一性(品物)と非均一性(思想)の違い」を筆者は問題にしていたのだ。 よく読めばそれらしい文句もありはする。 が、文脈に埋没していて意識化しにくいのだった。 つまり一見「何が書かれているか」を問いながら、 実は「筆者がテーマの前提として考えていることを推し量って記述してね」と要求する問題なのだった。 落ちついて筆者の思考過程を追跡しないと浮かびあがってこない。 ある意味、情報処理問題と言ってもよい。うろたえないこと・思慮深いこと、がカギ。 〔二〕の題材は2003年6月刊『人形の旅立ち』(福音館創作童話シリーズ)の中の短編。 20年の歳月をかけた自伝的ファンタジー連作で、 去年の跡見中2回入試でも同部分が出題されている。 島根のやや土着的風景の中で繰り広げられる、レトロな短編。設問は以下のとおり。
キイとなるのは【方言】【昔のお話(レトロな世界)】【人物関係の類推】の三点。 「きみは虎しゅとよう遊んだけんのう。ええ若いもんが、 ままごとの相手までしよるてて、台所のおなごしゅに笑われとった。」 去年の麻布中「信さん」(九州弁)がフラッシュバックする。 会話を読みちがえない言語反射神経が必須。 読書量の少ない者は当然苦戦。 人物関係の把握にも精密な注意力を要する。 軒の深い家のたたずまいから 「じょっちゃん」=「わたし」=「なお」が旧家のお嬢さんであること、 「虎おじ」が昔その家で庭掃除や子守りをしていたこと、 「きみじょっちゃん」=「父の姉(おば)」=「祖母の娘」であること……をきっちり押さえないと、 まったくピント外れの答に。字数制限も相変わらず厳しい。字数と時間との闘い。 【理科】
学校側が公表している理科の受験者全体平均と合格者平均を以下にまとめておきます。
ここ数年の理科は、上にあげたように、合格者平均と受験者平均の差が少なく、 また合格者平均が80%近くなっています。 今年も、平易な設問ばかりで難問はなく、 問題数も例年どおり30問前後で時間に余裕はあり、 理科の出来不出来が合否に大きな影響を与えたとは言い難いでしょう。 また、問題の設定ミスで全員加点された問題もあり、 最難関校の入試に挑戦にきた受験生にとっては、 やや肩透かしを食らった感が残ったのではないでしょうか。 開成の理科では、水溶液の性質と実験器具の扱い方、 力学計算・天体の動き・生物実験観察、この4つが頻出分野ですが、 今年の出題内容も例年とほとんど変わりません。 〔1〕は、重さの無視できる棒にかかる力のつりあいを計算する問題です。 特別な解法を必要とするわけではありませんし、複雑な計算もありません。 平常心であれば5分以内で楽に通過できたでしょう。 ただし、力学問題の性質上、7つある設問のうち最初で間違えてしまうと、 後半の設問もすべて間違えてしまう危険があります。 また、試験開始直後は意外とうっかりミスや勘違いをしやすいものです。 出だしの〔1〕にこのような問題が配置されたことが、 例年よりも合格者平均点と受験者平均点が開いた(とはいえ、 たったの5点ですが)原因ではないでしょうか。 〔2〕は定番の水溶液に関する出題です。 (1)〜(5)はアンモニア水・塩酸・食塩水・蒸留水の4つの水溶液について、 酸性かアルカリ性か、固体が溶けているか否かについて問うもので、 非常に平易な設問ばかりです。 (6)・(7)は、正しい試験菅の洗い方・振り方を選ぶもので、 十年以上前にも同様の問題が出題されています。 〔3〕の植物に関する出題は、 前半がヘチマ・トウモロコシ・アサガオ・タンポポ・イチョウの各花の特徴を問うもので、 後半は、温度と光の強さを変えたときの植物の光合成と呼吸のはたらきを 調べた実験結果を読み取るものです。 定番の生物実験観察ですが、開成受験生なら難なくクリアーできたでしょう。 〔4〕は昨年に引き続き、気象に関する出題です。 (1)〜(3)で、晴れた日と曇りの日の気温の変化の違いや、 気温と地温、水温の変化の違いを聞いています。 (4)は全員が加点された設問で、 真夏日と真冬日の条件(出題では「真冬日は最低気温が・・・℃以下になった日」と誤植がありました)を問うものでした。 (5)(6)は夏の平均気温が一番高い都市を選ぶもの、 入梅と梅雨明けの時期を選ぶもの、(7)(8)は海風と陸風、風向についての基礎知識を問うものと、 単発の知識を問う問題が続きました。 淡々と問題を紹介しましたが、ミスの少なさを競い合う試験であることはおわかりいただけたでしょう。 問題が易しいとはいえ、普段の学習では難問にも数多くあたり、 最後まで解ききる集中力を育成しなければなりません。 開成の理科では、点数の勝負というより精神力の勝負が今後も続きそうです。 【社会】
かつて「開成は算数社会で決まる」といわれた時代もあったがその面影は全く無し。 〔四〕の東京物語は関西勢に対する嫌味 (かつて東京23区問題で関西勢を震撼させたこともあったが、出題数、 配点から考えて合否にさほどの影響はなかっただろう)程度。 作問に要した時間は2〜3時間?と私も嫌味を言い、 「つまんなかった」でこれでオシマイにしたいのだが 一頁の紙幅を与えられているのでそうはいかない。 ちょっとしたエピソードも交えて原稿料稼ぎ(全くでない。ビタ銭一文出ない)に精を出すとしよう。 〔一〕はアテネ五輪ということでしょう。 問3、1936年の五輪で「ある新聞」が表彰台に立つ選手の胸の日の丸を消した写真をのせて問題となった。 この選手の出身地で朝鮮を選ばせる問題。 36年オリンピック(ナチスオリンピック)といえば 「前畑ガンバレ」で有名だがマラソン金メダリストソンギジョン孫基禎氏。 日の丸を消したのは「東亜日報」無期(10ヵ月)停刊処分、 孫さん自身も日本の官憲の厳しい監視下におかれた。 〔二〕では問3。「地方の特産物や手工業品を都に送った税で、 この税に関係する東京都内の地名」。 もちろん調布(麻布でも砧でも構わないけど)。 問9は鎖国政策でも良いんだけど当時は幕閣には鎖国という意識はなく、 この言葉自体が幕末に近いころ流布したのだから、 当時の江戸幕府が使っていた「海禁」のほうが正しいと思う。 無論授業でもこういう話はしています。 〔三〕の地理は北海道と九州。 問3、北海道と九州の面積と人口比。 これは○秘で比率を完璧に教えてあるので我が方の生徒はスラスラ。 問題は問6、ABの写真を見て地域を当てる問題。 Aの写真は乳牛とサイロだけ。 イの十勝平野を選ぶかアの根釧台地を選ぶか判断がつかない。 乳牛が最も飼われている地域と考えるとアが正解となる。 なぜなら別海町(パイロットファーム)・中標津町(環境首都中標津を自称)は 人口2万4千人に対し乳牛38200頭。 農家一戸あたり100頭の乳牛を飼育(こんなことも授業でやっているんです)。 Bはビニールハウスから宮崎平野。個人的に佐土原町あたりの風景かなと思う。 〔四〕の東京物語。 塾の実績稼ぎのため動員される関西勢へのイヤ味とは思うが小問7個では合否への影響は??? 問1、外務大臣の職についたことのない人。 環境大臣だった小池百合子氏を選ぶ。 問6、三宅坂近くに本部のある政党。 ヒント、党首は女性で、且つ女性で初めて衆院議長になった人もいる。 「ダメなものはダメ」の土井たか子氏。 従って社民党。関西勢もこの程度は知っているでしょう。 問8、霞ヶ関駅から地下鉄に乗り次の駅の銀座駅で乗り換え日本橋駅へ。 路線名を当てる霞ヶ関の次の駅が銀座で丸の内線。東京の子も解かんなあ〜い、じゃないかな。 問9新撰組の近藤勇が官軍の進攻を防ぐことに失敗した街道。 甲陽鎮撫隊。従ってウの甲州道中だがついでに流山で捕われ斬首、首は板橋で晒されたまで出してほしかった。 昨年のNHK大河ドラマが新撰組だからかしらん (オレTV見ないのでよくわからないんだけれど)。 問10、日本橋三越。ほほえましい。問11、日銀券で誤っているものを選べ。 答えは現在通用する日銀の表面には全てに人物が描かれている。 あまり通用していない二千円札表面は守礼の門、紫式部は裏面。 問12、現在の青果市場。大田区ですね。 そして問13、上野御徒町駅で大江戸線に乗るとき都庁前に行くには何番ホームか? 関西勢はオカチマチと読めたかも怪しい。この駅の読み方を答えよ、の方が面白いと思うんだけど。 正解はウの1番線でも2番線でも良い。環状線だから。 でも東京の子でもわかんなかったんじゃないかな。 問14、東京の地下鉄で正しいものを選ぶ。東京の(本当はアジアで最初の)地下鉄は浅草〜上野間が最初だが、 これは現在では銀座線の一部。1927年上野−浅草間2.2kこれは地域に関係なく受験生にとって当然の知識。 ということで少し微笑ましい問題もありましたということです。 |