【算数】
大問4問の構成になったのが1993年だが, 以来,進学校としての評価の高まりと同時に入試問題もゴツさを増してきた本校。 「誰も解けない4番」と酷評される超難問を出題したり, はたまた「方べきの定理」を出題したりと暴走状態だった90年代後半を経て, 2000年度以降難易度・出題範囲ともにバランスの取れた出題が続いていた。 「この内容・この難易度が定着してくれればいいのに」という関係者の願いもむなしく(?), また「誰も解けない3番」を出題, しかも他の問題も答えは文字式が含まれるなど周囲の顰蹙を買った昨年, ときて今年である。 今年の入試問題にケチをつけるつもりは毛頭ないのだが, ここまで内容が一変すると「今までの数年に出題してきた問題は何だったのでしょうか?」 「御校のアドミッションポリシーは,一体どこにあるのですか?」と 突っ込みの一つも入れたくなるのが人情というものだろう。 〔1〕小問集合が出題されたのはずいぶん昔だ。 (2)は一瞬ぎょっとするが7を何回もかけていって下2けたの周期を探していけば解決する。 着想自体は決して高度ということはあるまい。3問とも答えを記入するだけなので, 計算ミスは命取りだ。 〔2〕立方体ブロックを積み重ねて作った立体図形に色を塗って, 色が塗られていないものの個数を答える,という超典型題。 オリジナリティはまったくない。 この問題も注意力勝負,の感がある。 この2問までで,差だけはつくだろう。 大学入試でいえばセンター試験に強い子は選別できるだろうが, 将来二次試験の数学に対応できるだけの底力・資質を持つ子でも, 荒っぽい子は足をすくわれそうだ。 〔3〕設定自体は割とよく見かけるが,細かいところに注意が必要。 発想力よりも,作業の正確さ,丁寧さを要求する問題だ。 駒場東邦の問題というと,整数! 論証! 図形の移動! 立体図形! といった派手な出題が多いテーマに目が行くが, 実は点の移動(図形の移動ではなく)を丹念に追いかける問題は合否のカギを握るケースが多い。 また(3)の解が110秒〜130秒と範囲になるのに対して, 「出発してから何秒後ですか」という問いは答え方に困る。 「長くなる」と「長い」を区別しろ,というのだろうか。 〔4〕構図が複雑な面積比の問題。 (3)は2つの面積の差を計算させるのだが,多分, 台形ABGFから三角形を削った図形と,三角形ABHの差を計算させたいのだろう。 「なんで差なの?」という感もある。 昨年,確かに〔3〕は年間悪問リストの最上位に位置する問題だったが, 他の問題もふくめて全体としては駒東印−良くも悪くも, こんな問題,他に出す学校ないよねという意味で−の入試問題だった。 今年は一転して全般的にどこかで見たことのある問題ばかりで, しかも部分点がない設問が多いため,発想力よりも, 計算力・作業の正確さが大きく得点差となって現れる設定だ。 公式発表では今年は平均点が63.7点,合格者平均が77.6点と, かなりの点差が開いているが,その点差の大半がそういう能力の差であったと推察できる。 入試問題の傾向を変えることで,塾で無理やり鍛えられた知性ではなく, その場その場で対応できる本物の知性を備えた子を合格させよう, ということなのかも知れない。 それはそれで一つの見識だと思うが, 今年の入試問題を見て算数少年が本校に強い憧れを持つのだろうか? とも思うのだが…。とりあえず来年度の入試問題に大いに注目したい。 【国語】
かなり以前は物語文と説明文の2題構成であったが、 その後、漢字知識問題と物語文の2題構成となり、 2003年にはついに物語文だけの1題構成へ。 この形式が今年も引き継がれ、もはや定着したと断定してよいだろう。 かつては問題の難易度の動揺も見られたが、 この4〜5年レベルが高い水準で安定している。 字数制限の厳しい記述問題で勝負が決するのもこの数年の傾向と同じ。 漢字、知識、選択肢問題、そして字数制限記述など多彩な設問で総合力を問うスタイルも例年と変化なし。 本校受験生ならば、本文の内容理解はさほど困難ではなかろうが、 合格ラインの得点に達するにはかなりの実力を要することは間違いない。 本文のあらすじはを紹介しよう。 5年三組で運動も勉強も一番だった和泉文彦(ブンちゃん)。 二学期になって中西基哉(モトくん)が転向してくるまでは、 交通安全週間の標語もポスターもなんでもブンちゃんので決まりだったのに、 今回はモトくんの案に決まってしまい、ブンちゃんの苛立ちが始まる・・・。 二人は対立を深め取っ組み合いのけんかまでやるようになるが、 そこに登場するのが、ブンちゃんの姉。 彼女は小学生のとき交通事故に遭い、いまでも足を引きずって歩く。 子どもの心の痛みを身をもって知るこの姉が二人の心に柔らかく働きかけて、 いつしかブンとモトの心が通い合うようになる・・・。 このような「不和・対立から和解へ」という構図は駒東ではおなじみのもの。 例年最後の記述問題はこの構図を読み取らせて説明させる設問に振り当てられる。 さて各設問を見てみよう。 問1漢字15問は配点で30点だろう。 特に難しい漢字は書かせていないが、 「先制(攻撃)」「訪問」「宙」「夕暮れ」「画像」などは きちんと練習しておかないと、本番で書き間違える危険性高い。 当校では漢字は満点勝負と心がけてしっかり準備すべきは当然。 問2問3は語彙力の問題。 ここまでは差はつかない。 いよいよ問5で50字記述。 主人公の少年が「頬をこわばらせた」理由の説明。 50字にするにはそぎ落とすポイントを確定する必要がある。 「中西のほうが足が速い」とか「言いたいことは無かったが」云々は省略して 「片思いしている朋美や他の女の子たちと中西とのおしゃべりが気になり、それを止めさせたかったから」(45字) くらいにまとめる。 問7の50字記述は「なぜみんなはホットしたのでしょうか」というもの。 主人公の少年と中西をめぐる周囲の友人の複雑な気持ちを説明するには50字制限はなかなかに大変。 「中西がエースになれば文彦が傷つくことになるが、 本人が気楽そうにエースの座を譲ると言い出したので」(49字)くらいか。 問9の50字記述は友人の三好君の気持ちの説明。 文彦と中西の喧嘩直後の気まずい雰囲気で、 場を取り持とうとした三好君を文彦は突き飛ばす。 文彦は中西を不意打ちした自分の卑劣さに耐え切れなかったし、 自分に実力のないことを知りながらおべっかを使う三好君にいらだったからだ。 肩を持とうとした友人に突き飛ばされた三好君の気持ちの50字説明は意外に難しいのでは。 さていよいよ当校の最難関記述問13である。 百〜百二十字。「文彦と中西の関係の変化を考えたうえで」「自分のことばで」書きなさいとある。 「競争に勝つことが当たり前のように期待されていると、 なかなか素直な自分に立ち戻れないし、相手の本当の良さすら見えてこない。 いつも自分と相手に苛立ちながら自分を追い込み、 結局心を開きあった本当の友情をむすべなくなるから」云々のラインで書けば高得点。 このように最高水準の国語力を問う本校にいかなる対策で臨めばいいのか、 一朝一夕には説明できないが、 とにかく字数制限の記述を繰り返し錬磨する以外本校突破の道はない、 とだけ言っておこう。 【理科】
2003年分析の『そろそろ試験時間を10分のばして…』を受けてではなかろうが, 本年度から試験時間を30分から40分へと10分延長した本校の入試問題。 事前の説明会では,今までの難易度,分量は維持するとのことだったが…。 大問数5,設問数28は例年通りであったものの, 解答箇所や記述の分量を考えると,ボリュームは若干増えた。 とはいえ,10分の時間延長から考えれば, これで時間が足りなくなるようでは, そもそも『今日は何をしに来たのかな?』と言われても仕方がない。 〔1〕は毎年恒例の小問集合。結局,『君たちどれだけ勉強してきたのかな?』を問われているだけで, 何の面白みもないのは例年通り。 とはいえ,きちんと学習してこなかった受験生はここだけで大幅な失点をしているので, 選抜テストとしての妥当性はある。 〔2〕はA君が夏休みに南アルプスの聖岳に登山したときのゴンドラから, 強引に滑車の計算に持っていくというもの。 (1)にゴンドラのつくりを図示する問題があるのだが, 長いリード文の中にはヒントらしいヒントがないのも, もはや毎年恒例と言っても問題あるまい。 残りはどこの教材でも見たことのある, 滑車を引き上げるときの力の大きさと引き上げる距離を問う設問。 (4)では,支えているロープの本数から引き上げる力を計算し, 『力の大きさ×移動距離』が一定であることを利用すると簡単。 しかし,同種の問題が並んでいるので,ここで大きく失点した受験生もいただろう。 〔3〕はヘビの生態について。 日当たりの良い場所で見かける, 光沢のある固いウロコを持った,幼体は尾が鮮やかな青色をしている『ニホンカナヘビ』, 草原や庭先に出る,隆起のある,がさついたウロコでおおわれ, 地味な薄茶色をしている『ニホントカゲ』, 夜行性で指が吸盤状になっているため, ガラス窓や天井を自由に走ることができる『ニホンヤモリ』, 人家近くでよく見かける,白化個体を神の使いとして天然記念物に指定している地域もある『アオダイショウ』, これらの動物を答えるためだけにあるリード文には何の意味があるのだろう? その他で問われていることは,(3)ヘビやトカゲが日当たりの良いところでじっとしている理由, (4)寒さに強くないヤモリが本州北部にも分布を広げている理由, (5)ヘビの舌の役割, (6)動かせるまぶたのないヘビが, 目の乾燥や異物の混入を防ぐ工夫。 (3),(4)は爬虫類が変温動物であることから答えられなくもないが, (5),(6)は知っているか知っていないかだけの???な問題。 それとも,昨今の爬虫類ブームに駒東受験生は乗っているものなのか? それともこれをジョーシキとするのか? `04『クサフグ』といい,`02『カワセミ』といい, 生物分野が普通部化している気がするのは私だけか。 〔4〕冬の雲画像ですね。それ以外の何モノでもありません。ハイ。 〔5〕ローソクは空気の対流によって炎が細長くなっているのだから・・・っていうお話は, 啓明舎では4年生の授業のときにしてあげるもの。 本校志望者に贈るアドバイスは1点。 普通のことか普通でないことを聞かれるだけなので, 日頃から勤勉に学習し,ヘンな問題が出ても慌てふためかないこと。以上。 【社会】
当校は年々スタイルを「進化」させ、 記述問題を増やしてきた。 昨年顕著に記述が増加したが、今年もさらに増加した。 小問が全部で23問あるうち記述問題が9問であり、 記述勝負と言っても過言ではない。 その特徴と言えば、一行記述が大半( 7問)。 残り2問は2行記述であるから、文字数事態はさほど多くはない。 具体的に見てみよう。 〔一〕問1では「漆胡瓶」(しっこへい)などの写真を4点見せ、 正倉院御物にあたらないものを選択させる問題。 写真資料をきちんと見ながら学習しているかどうかと試しており、 来年の参考にすべき。 問3では、書院造の写真を見せて、 「以前の時代にない特徴を3つ」説明させる。 特に難しいことを問うているわけではなく、 床の間、棚、書院、畳などの存在を指摘すれば合格ラインになる。 あとは解答欄の大きさに合わせて20字程度にまとめる力が必要なだけ。 (例)「部屋の正面には床の間があり、棚がついている」 問4は盲点を突く問題。 村の掟として「森林から木の葉や葉っぱを盗んではいけない」というものがあるが、 それらは燃料以外に何に使用するのかを問う。 勿論肥料の歴史を学習していれば、 「草木灰」や「刈敷き」はご存知のはず。 江戸期になると、肥料が金銭で売り買いされ、 「金肥」として鰯やニシンの〆カスが有名になり、 下肥とのブレンドが木綿などには即効性のある肥料として重用されたということも当然学習しておくべき。 その直後の質問は「掟の中にある森林はどのように使われた土地と考えられますか」 とあり約30字程度で記述説明を要求している。 解答例としては、戦国時代の「惣村」関連の問題なので、 「村共同の入会地として村の合議制で決定し共同で活用していた」くらいが適当であろう。 次の問5は朝倉氏が家来を一箇所に引越しさせた理由を記述させる問題であるが、 解答できないものが続出したであろう。 戦国時代は家臣と地元の勢力との関係を切り離し、 忠誠を誓わせるために城下町に移住させ、 俸禄をあたえたという事情を説明するにはかなりの学習が必要。 問6は面白い趣向の作問。 江戸時代の紀尾井坂一帯の地図と現在の同地域の地図を比較させ、 方位を判定させたり、地図から読み取れる情報を考えさせたりする。 現場の判断力を試す良問と言えよう。 方位判定のポイントは双方の地図の中から 「紀尾井坂」を読み取れば確定する。 あとは「地下鉄丸の内線がかつての堀にそって走っている」という選択肢を地図で確認すれば、正解に至る。 この作問は昨今売れ行きを伸ばしている某出版社の「帝都東京・隠された地下網の秘密」などに 刺激を受けて作られたのではあるまいか。 来年はこの手のスタイルが他校でも続出する可能性がある。 問8は関税自主権がない場合の国内産業への影響を30字で説明させる問題。 価格競争に敗れて産業育成に失敗するという観点に触れれば評価されるだろう。 問10の記述問題は「1980年代に建設された住宅団地では人口は減少していないのに、 学校の統合や廃校が行われている」理由を2行で説明させるもの。 少子高齢化にポイントを定め説明すれば大やけどはしない。 〔二〕少子化傾向と年金法改革に関する昨年6月の読売新聞の記事を読ませ、 「少子化がすすむと年金保険にどのような影響がでると考えられるか」を 一行程度で2つ記述させる問題。 記事内容をていねいに読めば、 「年金財政が厳しくなる」「保険料負担の上限をさらに引き上げる」 「年金支給開始年齢を引き上げる」などが書いてあるので、 そのまま活用すればなんとか書けるが、 本番でそこまで行くにはかなりの読解力と判断力が必要となろう。 ということで今年も駒東の社会は一層「進化」したと判断する。 昨年は「鎌倉時代の東国と西国」「3割自治」「地方財政の弱さ」 「補助金などの誘導」など「何か出来の悪い大学入試」という辛らつな評価を上程させていただいたが、 今年の出来栄えは当校の努力を物語ってはいまいか。 |