桜蔭中学校 科目 算数 国語 理科 社会 合計
配点 100点 100点 60点 60点 320点
時間 50分 50分 30分 30分  

【算数】

〔1〕小問集合3問(分数の逆算・倍数・約束記号)難易度B
〔2〕和と差および範囲の文章題         難易度A
〔3〕規則性に関する問題            難易度A
〔4〕底面積と水深の変化            難易度B
〔5〕速さの比                 難易度B
〔6〕立体の切断                難易度B

出題数・出題分野・難易度ともほぼ昨年と同じ。 試験形式の変更にともない、 「桜蔭の入試問題」「桜蔭の算数」というスタイルが確立・定着したといえるだろう。 昨年の〔6〕(立体の切断)のような「難易度C」の問題こそ見当たらないものの、 〔1〕の小問集合から最後まで、見た瞬間に解法が思い浮かぶような「典型題」はほとんどなく、 算数に対する苦手意識や「桜蔭の算数」への恐怖心に囚われたまま 試験本番を迎えた受験生は大きく失点する危険性がある。

〔1〕(2)の「2.5と と2の最小公倍数」、 (3)の約束記号とも、落ち着いて解けばなんということはないのだが、 女子校の算数の〔1〕としては意地の悪い問題。

〔2〕は桜蔭のお家芸「不定方程式・不等式系文章題」だが、 これはやさしい。 「桜蔭の文章題は式で解くべし」というお約束を知っていれば5分以内に即答できるはず。

〔3〕不規則な規則性(?)だが、 これもまた「桜蔭の規則性は解法パターンではなく地道な手作業」 というお約束通りの問題。

〔4〕は水そうに棒を入れていく古めかしい問題だが、 水そうと棒の底面積を比に直しておかないと、 計算がタイヘン。 ここまでを25〜30分でクリアすることがとりあえずの目標となる。

〔5〕上手に比をそろえられれば、 解けたときの爽快感を堪能できる。 武蔵あたりが好きそうなタイプの問題だが、 志望校に関係なく一度は取り組んでおくべき算数らしい良問。

〔6〕立方体の一部を取り除いた立体を切断する問題。 「切り口の見え方」を問うているところが昨年とは異なる。 中学入試の世界ではもう「典型題」のひとつだが、女子校ではまだ出題例は少なく、 「立体感覚」の乏しいお嬢様方(そんな方は桜蔭にはいらっしゃらない?)にとってはハードな問題だ。

問題のオリジナリティ・出題分野と難易度のバランスなど、 よく練られたセットであり、 桜蔭志望者はこの3年間の出題傾向にあわせて「しかるべき対策」を立てれば、 裏切られることは少ない。

出題ジャンルとしては「整数と規則性」「速さ」 「立体」「不定方程式(書き出し)」が4巨頭(?)だが、 元々は「点や図形の移動」と「場合の数」が桜蔭のお家芸であり、 この2ジャンルも無視できない。 ということは、 男子校も含めて「今風の入試問題の主流」を1通りマスターしておけばいいわけだ。

ただし他3教科の出題レベルも年々上昇かつ安定しており、 算数は「ある水準以下の生徒を確実にはねのける」壁としては機能していても、 「ある水準以上の(マトモな)桜蔭受験生」のなかで、 かつてのように「算数1教科だけ」で勝負する (他教科の失点をカバーする)のは不可能になっていることも肝に銘じておこう。

【国語】

〔一〕論説文…西郷竹彦の文章 約3800字 小問数5(記述4)
〔二〕物語文…桂望実『ボーイズ・ビー』約3000字 小問数3(記述2)

本文中の漢字の書き取り (異論・省略・困らせる→貧困・勤務→勤勉・秘密→神秘)の五問を除いて、 残りは全て「記述問題」です。 「解答らん」もいたってシンプル。 字数指定も「三十字から四十字にまとめて」というものが一問と「百五十字以内でまとめなさい」が一問。 残りの記述問題四問は「指定なし」で「空欄を自由に埋める」タイプ。 解答用紙一枚が受験生に与えるプレッシャーは相当のものでしょう。 「このスペースを埋め尽くすのか…」と普通なら溜息の一つももれるところでしょうが、さにあらず。 「望むところ!」と挑みかかる気迫がなければそもそも桜蔭は戦えないのです。

〔一〕について。 出典の明示はありませんが「私の文芸学の立場からすれば」という言い回しが使える人物は日本に一人。 西郷竹彦先生でしょう。 本文にも引用されている通り、西郷文芸学では、 「虚構の世界」を「現実を踏まえ、現実を超える世界」と定義しています。 問題文では萩原朔太郎の作品「およぐひと」が取り上げられ、解釈されています。 「二本の手がひきのばされ」(平泳ぎをしている)とあるのは<現実>です。 ところが「およぐひと」の「心臓はくらげのようにすきとおり」というのは<非現実>です。 しかしながら読者は違和感を覚えません。 「心臓」に「こころ」とルビをふることで、比喩が不自然に感じられない工夫がなされています。 ここに、現実を踏まえているという<日常>と、 現実を超えているという<非日常>が錯綜する「世界」が生まれるのです。 そこは異質なもの、矛盾するものが一つにとけあう場所。 これこそが作家によって意味づけられた「虚構の世界」だと西郷先生は言うのです。 難解などと言うなかれ。 設問の四ではこの「虚構の世界」を「天地人一体となった境地」と 表現しているのはなぜかを説明しなくてはならないのですから。 桜蔭国語もここまできたかの感しきり。特訓担当者冥利につきます。

〔二〕は物語。 〔一〕の文章に比べるとグレードは数段…。 幼い弟の手前、痩せ我慢して頑張ってきたお兄ちゃん(小学校六年生)が、 「やっぱりママが死んで悲しいよ」と、素直に開き直るハナシ。 身も蓋もない紹介だなコリャ。 設問も「隼人(お兄ちゃん)の心にどのような変化が起こったことがわかりますか」というもの。 そのまんま。百五十字という字数に慌てる受験生がいたとすれば、それは「特訓不足」。

これだけの「記述問題」です。 一朝一夕では身につかない「国語力」(読みきる力・書ききる力)が問われていると覚悟を決めるべき。 特訓授業でお待ちしています。

【理科】

〔1〕光の反射(設問数5)
〔2〕二酸化炭素濃度の変化と地球温暖化(設問数5)
〔3〕森林の変遷(設問数3)
〔4〕溶解度の計算(設問数5)

問題数は少ないが、 作図・グラフの読み取り・記述・計算と盛り沢山で、 試験時間の短さを考えると、適切な分量だろう。 1問1答式の単純な知識問題はほとんどなく、 合格者と不合格者のあいだには「適度な得点差」がついたと推測される。

〔1〕問1〜3は鏡に写った自分の顔と額ぶちの絵を、 いろいろな場所からみたときの見え方を考えさせる問題。 額ぶちを線対称な位置に移して作図するだけだが、 昨年の〔1〕同様、物理系の苦手なお嬢様にとっては厄介なハードルかも。 逆に問4・5の「万華鏡の見え方」は、生真面目に光の反射のしかたを考えるより 「線対称」で直観的に答えてしまおう。

〔2〕二酸化炭素濃度の増加の原因・グラフがギザギザになっている理由 (夏と冬で植物の光合成のはたらきが異なる)・ 北極の氷山と南極の氷河が溶けたときにどちらが海面上昇への影響が大きいか (氷山は浮いているから溶けても海面は上昇しません)など、 過去多くの学校で出題された問題そのまま。 昨年もリサイクル問題が出題されており、環境ネタは来年も続きそう。

〔3〕前半は陽樹の森林が陰樹の森林に変遷していく理由についての典型題。 後半は乾燥重量が重い種子と軽い種子のどちらが生き残るかという別の観点からの森林の変遷について。 「高さ50cmを越す草がびっしりと生えていた」という条件から、 「ある程度までは種子の養分で成長しなければ光合成できない」と考えさせる。 これも昨年の「カエルの習性」よりは取り組みやすい問題だっただろう。

〔4〕これまたミョウバンの溶解度についての典型的な計算問題。 きっちりと定比例する気体の発生や中和反応より計算が面倒くさいせいか、 溶解度計算を苦手とする受験生も少なくないが、 女子校では超頻出テーマなので、このくらいは完答してほしい。

全体として、昨年の「パスカルの原理」+「ヒキガエルの習性」+「火星大接近」というセットよりは、 はるかにおだやかで、解きやすい。 〔1〕であれこれ思い悩み過ぎて時間切れ、というのが最悪のシナリオ。 難易度順に配列されていない(むしろ後のほうがやさしい)ので、 まず全体の構成をさらっと眺めて、得意分野から手をつけていくようにしよう。

対策としては・・・

  1. @ 大失点しない程度に全分野を広く浅く学習しておく
  2. A 環境・時事問題、生物実験、化学計算の3つは必ず出題されるものと覚悟しておく
  3. B 試験時間が短いので、よくわからなかったら「えいやっ」と答えを書いてしまう度胸をつける
  4. C それ以上に深く理科を学習するヒマがあったら、算数と国語(記述)に力を注ぎなさい

以上の4点でございます。

【社会】

〔1〕地理 時事問題 アテネ・オリンピック、地球博 解答数7
〔2〕地理 統計・資料問題 解答数5
〔3〕地理 石油について 解答数7(記述1)
〔4〕歴史 世界遺産 解答数8(記述2)
〔5〕歴史 歴史上の文書など 解答数10
〔6〕公民 正誤問題 解答数10

一昨年迄の国社併せて55分のスタイルから、社会が独立して2年目。 昨年より大問一題増えただけなのに、印象は大きく異なる。 歴史分野ではテーマ性のある長いリード文がなくなったためで、 一昨年以前のテーマ性のあまりない多岐にわたる設問が続く出題に近い。 記述3題、語句を解答するのが5題で、残りはすべて記号選択式という形式はほぼ昨年並。

冒頭〔1〕問1から紛らわしい。 「アテネより南にある都市をすべて」選ぶのだが、バクダッドはともかく、 東京をすんなりとは選べない(アテネは北緯約38度、東京は北緯約36度)。 「すべて」という指示だから、一つではないだろうという選び方になる。 他にも自信を持ってこれだと選ばせるというより、 他の選択肢が誤りだと明らかだからという消去法で解くようなものが〔1〕や〔2〕でいくつか見られる。 北京と「東京の時差は、東京の方が1時間早い」や1970年が2.13だった数字が2004年には1.29になったグラフを見て、 「一人の女性が一生に産む子どもの数」(つまり「出生率」)を選ぶといったものである。 大切なことは、自分の得点できるところをミスなく解き進むこと。

〔3〕では石油に関係の深い工場がたがいにつながっている図を見せて、 「石油化学コンビナート」と答える、石油タンカーを三つの船の図から選ぶ、 火力発電所のある場所、発電量の割合というのは基本の確認。 一題の記述にてもは石油化学コンビナートが「どのようなところに分布」し、 また「そのように分布する理由」。 「太平洋に面したとこと」が「原料である石油の輸入に便利」という点を書けばよいが、これも易しい。

〔4〕は世界遺産として登録された地域が羅列されたリード文をもとに、 三つの文に関係が深い遺産を選ぶ、廃藩置県以前の日本の国境(くにざかい)を示した地図から、 斜線部分の国名をすべて正しく記したものを選ぶ、斜線部分に位置する文化遺産を選ぶあたりは易しい。 記述問題は「江戸時代における…琉球王国と、日本との関係」、 「中国との関係」をそれぞれ「簡単に」説明する。 「島津氏の支配」「朝貢貿易」といった語句を中心に説明すれば良いだろう。 社会の苦手な生徒にはちょっと酷というレベル。

〔5〕は記号選択式が中心、〔6〕は○×の正誤問題。 特にこれといって難しい問題が見られるわけではない。 とはいうものの、なにげなく選択肢の文をよんでいたり、 注意力が散漫だったりすると、思わぬところでひっかかるということは考えられる。

対策としては、まんべんなく基本をおさえるというありきたりの結論しかないが、 30分という時間を考えるとスピード処理が求められることはまちがいない。 解答を書く前の吟味、時間が残った場合の見直し、これが大切。