麻布中学校 科目 算数 国語 理科 社会 合計
配点 60点 60点 40点 40点 200点
時間 60分 60分 50分 50分  

算数

〔1〕 消去算 難易度A
〔2〕 整数の性質 難易度A
〔3〕 平面図形の性質 難易度B
〔4〕 速さの文章題 難易度A
〔5〕 整数の性質 難易度B
〔6〕 正五角形の性質 難易度C

質,量,ともに申し分ない内容だった昨年から一転, 「算数では差がつかない,ミス勝負」が続いた90年代後半のレベルに戻った。 合格最低点は106点から113点と7ポイント上昇したが, その大部分は算数によるものと推測される。

〔1〕難易度を落としていたころの麻布に近い,何の変哲もない文章題。

〔2〕剰余に関する問題だが, ここを間違えているようでは麻布のみならず他の学校の合格も危うい。 (1)は問題文を読んだ瞬間に(20の倍数−2)で最大の2ケタの数だから98じゃん, と答えが見える。 さらに(2)は5で割ると2余り,7で割ると2余る数の37が いきなり「当たり」であるためあとは140を足していくだけ。 500に最も近い数,ということで, なめてかかって500より小さい数を答えにすると 実は500を越えた数の方が「近い」という最低限のひねりすらなく, 一体何人が間違えているんだろう,と首をかしげたくなるレベルの問題。

〔3〕一枚目で唯一,差がつきそうな問題はここだけだが, 難しいかというと難しくはない。 紙テープが折り重なっている分だけ面積が減る, ということに気づくかどうかだが,大半の生徒は気づいただろう。

〔4〕難易度を落としていた90年代後半も, 速さの文章題だけはなかなかてごわい問題が多く, そろそろ本領発揮か,と身構えたものの,この問題はやさしい。 (1)の答えがとてつもなく「遠い」ので, 「なんだこりゃ,一体どこの国の話なの?」と不安になる生徒がいたか。 「帰りの列車」の出発時刻がわからないのが急所になるのかと思って(2)を解くが, 急所でもなんでもない,という不思議な問題。

〔5〕あてはめでもある程度答えが出てしまう, 1通りは比較的見つけやすい,ということから難易度Bにしたが, 2通り目が見つからなかった,というのが平均的なデキ具合だろう。 「横1列の和」が真ん中の数の3倍になることに気づけば, 上の1列と下の1列で,対角にくる数字の和が真ん中の数の2倍になることが (直観的にではなく論理的に)わかる。 このあたりの「条件の絞り方,見当のつけ方」は, 最近の麻布では重要になるポイントだ。 ここまでの問題のレベルを考えると, 「真ん中に入る数が異なる場合をすべて書きなさい」ぐらいでちょうどよいところ。

〔6〕麻布といえば正六角形の模様を昔は好んで出題していたが, 今年は正五角形。 2003年早稲田中学一次に設定が同じ問題が出題されている。 これも誰も解けないほどの難しさではないので, 算数が得意な生徒なら十分最後までこなせるレベルだ。

結局,何の山場もないまま終わってしまったなあ,というのが今年の印象。 〔1〕〔2〕はいくらなんでもやさしすぎるのでは? 昨年の目標ラインは5割強だったが, 今年は6割強は欲しいところだ。 ただしこのレベルが定着するとは考えにくいため, 本校の志望者はあくまでも過去5年のレベルを目安に学習を進めるべし。

国語

物語 フィリッパ・ピアス作/片岡しのぶ訳
「ロープ」(約6100字)
小問17題
(内:記述10題 字数制限なし)

麻布の先生,ありがとうございます! これは二重の意味で,すばらしい問題! まず題材の良さ。 これをあますところなく設問に反映させた手腕。 そして麻布らしい香り…。 麻布はやはりこうでなくっちゃ!

もう一つの喜びは当塾が問題的中したこと。 啓明舎・学校別特訓問題作成・特務工作隊員(なんじゃそりゃ)が, 同場面,設問のツボも酷似の問題を03年入試用に作成。 当然今年の麻布受験生も,ぶつかりげいこ済み。 状況設定の確認(絵を書く)・登場人物の性格・題材のテーマ…。 彼奴等にはそれがすでにわかっている。 だから,本番では記述に割く時間をかなり確保できたはずだ。 一度格闘した,その自信も大きな余裕だ。 正直入試問題を見た瞬間,不思議な既視感にとらわれた。 これがデジャヴュか。

ピアスは『トムは真夜中の庭で』『真夜中のパーティ』(岩波少年文庫)等で 著名な, 英国児童文学の第一人者の女性作家。 どの作品も,少年少女のみずみずしい感受性が田園風景の中で香っている。

今回出題の「ロープ」は, だれもがいつかどこかで経験したことのあるほろ苦い失敗の感覚が主題だ。 苦手も個性の一つ。 そのどれがよくてどれが悪いということでもない。 人はいろいろで,多様性に満ちた存在なのだ…。 そんな真理が主人公の「気づき」を通してさらりと描かれている。

設問は,漢字書き取り(悲鳴・垂れ・往復),選択問題4問,書き抜き2問以外は すべて記述で答えさせる問題。 なかでも「なぜですか」と理由を問う問題が頻出(8問)。 状況を把握し,主人公が「なぜ」その言動をとったのかを説明しなくてはならない。 しょっぱなの記述問題の難易度が高い。

問3「『いいけど』マイクはどっちでもかまわないよ, というようにちょっと肩をすくめて見せた」とありますが, このときマイクはなぜ「いいけど」と言い, 「肩をすくめてみせた」のですか。説明しなさい。

主人公のマイクは,お祖母さんの勧めで, 川でロープ遊びをせざるをえない状況にある。 運動音痴の彼はロープの悪夢をみるほど,それを避けたい。 でもプライドが高いので「嫌だ」なんて言えない。 雨が降ってくれればいいのに,午前中に雨が降る気配はゼロだ。 せめて午後から雨が降ることを期待して, 川遊びの予定が午後になるよう,妹を誘導する。 その誘導の仕方も,本音をさとられまいと計算した上での余裕のふり…。 涙ぐましい演技性で,本音とはうらはらな言動をとる。 これを3行で説明しなくてはならない (事実,今,こんなちっこい字で既に5行前後使ってしまった)。 以下,推して知るべし。

設問は問14まである。 字数指定はないが,全部書き切ると大体700〜800字になる。 なまなかの記述対策では手も足も出ない。 啓明舎では今年の麻布特訓生は全員合格。 去年からの通算でも16人受験中15人合格。 来年の麻布特訓生も鍛えまくるから, 赤入れ添削・書き直し・個別おみやげ(宿題)等覚悟して, みんなまとめてかかってこ〜い!

理科

〔1〕生物 植物の環境への適応〜電照菊や桜の開花条件,植物の昼寝現象について 難易度B
〔2〕化学 電解質と非電解質〜食塩が水に溶けるときのしくみ 難易度B
〔3〕物理 力の伝播〜ゴム動力で動く模型自動車のしくみ 難易度B
〔4〕地学 太陽の動きと時刻〜南中時刻の年変化やうるう秒について 難易度B

設問総数や記述式の設問数もここ数年安定していませんが, 一つの大きなテーマに沿ってさまざまな角度から 理科の資質を試す設問が連続する傾向はまったく変わっていません。 扱われているテーマの難度は,過去数年と比べ小粒でしたが, どの設問も地力の差がそのまま点差に表われてしまうものばかりでした。

  • 平成18年:設問総数30問 記述解答数9問(30%) 代表問:分子間に働く力・植物の環境への適応
  • 平成17年:設問総数26問 記述解答数6問(23%) 代表問:タンパク質の質量分析法
  • 平成16年:設問総数32問 記述解答数14問(44%) 代表問:遺伝子情報の読み取り方・燃料電池

〔1〕は,植物の環境への適応を大テーマとし, 日照・気温・乾燥の3条件に対して植物がどう対応しているかを考察させています。 手がかりとなるリード文がないので, これまでに習った事柄を総動員してつなぎ合わせて考え, 記述解答をまとめなくてはいけません。 日照時間と植物の開花季節(電照菊に関する考察)についての設問は, 他校の入試問題でも扱われる内容ですが, 乾燥から身を守るための"昼寝現象"に関する設問はわかり難かったかもしれません (啓明舎の麻布特訓では全く同じオリジナル問題を最終回にやったので万全でした)。

〔2〕はいわゆる"電解質"について考察させるものです。 小学生にもわかりやすいリード文をつけて説明したあとで, 食塩の結晶構造や食塩が水に溶けるときのしくみについて, 電気的な力がどのように働くかを考えさせながら記述させています。 設問の順序にしたがって想像をふくらませていかないと, うまく記述をまとめることはできません。

〔3〕は,物理パズルでよく登場する設問が連続しています。 4輪駆動車の有利な点を考察させる記述問題以外は全て記号選択ですが, どの設問も微妙な選択肢が含まれており, 力の伝わり方を丁寧に考えないと正解を答えにくい設問ばかりです。 最も点差のついた問題でしょう。

〔4〕は頻出テーマの1つの"測定法"から"時刻"に関する出題です。 太陽の位置で時刻を決めることの不都合な点を南中時刻のずれから考察させる記述や, 春分の日に昼が夜より8分長い3つの理由を考察させる選択問題など, 小粒ではありますが山椒のきいた設問が続きます。 大きなテーマにそってさまざまな角度から考える経験を積んでいるか否かで, 点差が開いたのではないでしょうか。

麻布中の理科の底流にある理念を確認しておきましょう。 この学校では, ある生物の生態やある一つの科学現象に限定されて出題されることはありません。 武蔵中の入試で代表されるように, 個々の科学的現象を他の現象と比較し, 特異点や共通点を見出すことも科学の基本姿勢として大切ですが, 麻布中では個々の科学的現象を普遍的な原理で 体系化しようとする姿勢をより重視しているのです。 過去の出題でも,進化や遺伝といった難しいテーマが頻繁に登場し, 受験生に"その場で知識を連関させて類推させる"設問群が出題されます。 生物が水中で暮らすことの有利な3条件と問われたら,すぐに答えられますか? 一つの話題に関していろいろな事柄を頭の中から引き出し, 一つの体系化された結論を導き出す経験を数多く積むことが合格には必須です。 また,最新の科学ネタに触れ,知っている話題を増やしておくことも大切でしょう。 40点満点で確実に24点を越える力をつけるためには特別な対策が必要であることは明白です。

社会

〔一〕 小問18題(内:記述11題)

テーマは紙。 そして新聞から情報化社会にまで足を延ばす構成となっている。 例年と違うところといえばリード文が生徒と先生の会話から構成されていたのが 4ページの文章となったことだが長さも例年通り,従って妥当。 後からも書かせていただくが平均点対策が近年目につくが 問1の正倉院・書院造・大塩平八郎・伊能忠敬, 問2の「調」, 問4の美濃土佐の現在の県名など フツーの麻布受験生なら落とすことのない問題を並べまずはリラックス感を与えている。 しかしそれ以後は麻布ワールドへ受験生を誘(いざな)う引っ張り込む設問に移行していく。

まずはさらっと問3で襖の裏紙が現在の私たちからみて貴重となる理由。 ここで永井荷風「四畳半襖の下張り」などゆめゆめ想像してはならない。 日本史学を書き換えたあの網野善彦さんの反・百姓=農民論を裏づけたのは まさに能登時国家(北前船の大船元)文書であり, まさに襖の裏紙に詳細に記述された文章が決定づけたことを考えれば十分。 授業でも北前船にからんで当然話をしています。

問6はスローカーブ。和紙と異なる洋紙の特徴を2つ。 工業生産による規格品, 更に硫酸バンドで溶かしているので変色ボロボロになりやすいこと, これも授業の常識。

そして問7からは新聞からITまでの射程。 まず問7 民主主義社会にとって新聞情報は必要か。 主権者たる国民,更には戦時下の言論統制情報操作などが頭に浮かべばOK。

問8 新聞社が広告料に頼ることが記事に影響を与える可能性について。 スポンサーの有形無形の圧力程度で十分か。 問9,HPと新聞の紙面の違いを2つ。 リンク,関連事項,ネット操作を考えれば良い。

問10もスローカーブ。 紙の利用法の例を情報伝達の手段以外で一つ。 そしてそれは紙のどのような性質を利用しているか。 身の回りを思い浮かべるとティシュががすぐに眼に浮かぶはず。 保水性吸水性とつなげれば良い。

問11は60字以上100字以内。 紙の大量生産使用が与える影響。 1トンの紙は20本の木から。 森林破壊・生態系(ここからウィルスまで踏み込める) さらには土砂崩れなどの自然災害, 上水の問題そして「森は海の恋人,海の母」 このへんは環境問題で何十遍くり返したかわからない。

そして最後,トリ。 新聞以外で紙を使った情報手段を取りあげそれがどんな社会をつくりあげたか, 120字以上160字以内。 週刊誌月刊誌がパッと頭を横切れば良い。 そしてこの種のメディアが情報を消尽するものとして扱い, スキャンダルや売らんかな精神に満ちた記事。 そしてそれを好む人々。 「情報振り回され社会」あるいは一瞬の嘘を楽しむ底の浅い社会。 民主主義の成否はその国民の思考の成熟度に大きくかかわるということを 考えれば眉をひそめたくなることも。 すべてを消費しつくす, 一過性のものとしてしまう「情報化社会」への深い憂いがあれば文句無し。

ということで分析をThe endにしても良いのだが紙幅に少し余裕があるので, 麻布志望者へ一言。 麻布の社会は数詞(年号等)や固有名詞を暗記している程度では全く対応できない。 自然的・社会的事象へのヴィヴィッドな眼, そして自分なりに“どうしてだろう” “どうしてこういう問題が生起するのだろう”と考える姿勢がなければ対応できない。 そして欄の狭さ,記述の字数制限,国語力つまり文章作成能力(作文ではない), そのために和語熟語を縦横に使いこなせるようにならなければならないのだ。 まさに十二歳の偉大な教養人に変身しなければならないのだ。


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