開成中学校 科目 算数 国語 理科 社会 合計
配点 85点 85点 70点 70点 310点
時間 60分 50分 40分 40分  

算数

〔1〕 和の分解・書き出し 難易度A
〔2〕 速さと比 難易度A
〔3〕 立方体の切断と展開図 難易度B
〔4〕 循環小数と約束記号 難易度C

昨年に引き続き4問構成だが, 〔1〕の小問集合はなくなり, また,出題ジャンル(だけ)を一瞥すると, 「かつてのゴツゴツした開成算数」の匂いがプンプンする。 しかも大問は4題のまま。 「うわ,これは大変」(受験生) 「お,これは面白そう」(算数担当講師)とそれぞれの思惑のもとに手をつけ始めると, 「なんじゃ,これ」だ。 やっぱり昨年同様,1問1問のボリュームが軽すぎる。

〔1〕は昨年の〔2〕と同系列の 「条件を読み取り, 整理して, 複数の組合せを書きだしていく」問題。 「武蔵風の」と形容すれば, わかる人にはすぐにどんなタイプの問題かわかるだろう。 和の書き出しにおける「足切り」のテクニック (たとえば本問(2)であれば「全部×でも6点だから, あと+5点の組合せを求める」) も使えるが, 愚直に調べていっても大した手間はかからない。 ただしこのタイプの問題が苦手な受験生は 〔2〕〔3〕の「典型題」を先に片づけておくとよいだろう。

〔2〕は「予定の時間=20」と仮定すれば3分で解ける瞬殺問題。 これを落としているようでは受験校の選択ミスといわれてもやむを得ない。

〔3〕切断面が等脚台形になる立方体の切断。 しかもその上で「展開図でのりづけしたところがはがれてバラバラになる」という, ちょっとドキドキする設定なのだが, 何のことはない。 ただ見取図と展開図の頂点を対応させて, 切り口を展開図に書き込むだけ。 よほど立体の切断にアレルギーをもっている受験生でない限り, これなら解けるだろう。 計算処理も簡単。 ここまでは最長でも30分以内で完答してほしい。

〔4〕このまま終わったら石でもぶつけたくなるような(?) 問題が続いたが, 最後は平成13年の〔2〕を 彷彿させる約束記号(ただし難易度は2ランクくらい低い)。 循環小数を分数に直す方法を知っていれば, 「あ,アレだ」とすぐに気づくはずだが, 親切な誘導になっている(1)を解いているうちにそのことに気づかないと, (2)はまったく手をつけられなくなる (といっても〔3〕までをしっかり正解しておけば, 最後の1問は捨てても合格ラインをクリアできるが)。 その(2)は 「分子が3・分母が30以下で小数第6位までの循環小数になる分数を3個見つける」 という問題。 「循環小数」を学び, かつ「分母7の分数を小数に直したときに登場するフシギな数列」 (算数オリンピックなどではお馴染みのテーマ)を知っていれば, 3個のうちの2個はすぐに発見できる。

  昨年よりいくぶん難易度は上昇したかに見えるが, 受験者平均は50.6点→55.1点と上昇。 合格者平均にいたっては65.8点→71.1点(83.6%)! つまり大半の合格者は 〔4〕(1)までほぼパーフェクトの解答を作り上げているわけだ。 ここまで受験生のレベルが上昇している以上, 1つ2つのミスで実力者が苦杯をなめるような入試問題はご勘弁いただきたい。 対策はただひとつ。 最高レベルの問題を楽しんで解き, かつ自分の思考過程を冷静にみつめ, 自己修正していけるだけの余裕をもつことである。

国語

〔一〕随筆 永井龍男「黒い御飯」約3100字 小問5題(記述4題)
〔ニ〕随筆 石井政之『人はあなたの顔をどう見ているか』
約2100字
小問7題
(記述3題 漢字・書き取り4題)

例年,意表をつく出題で受験生を翻弄する開成の国語。 過去問の【傾向と対策】を裏切るさまは, 「去年?そんな過去のことは覚えてないなぁ …。 来年?そんな先の約束なんかできないさ」とでも言いたげ。 04年は9200字の戯作文。 しかも本文に傍線さえなく。 05年は地方の旧家の少女のレトロな物語。 方言への言語反射能力も必要だった。 さて06年は…?

〔一〕は永井龍男の文章。 「小学校も卒(お)えることができずに, 小さい時から工場通いをし続けてきた兄が, 工場の帰りにカバンを買ってきてくれた。 A社の給仕に出ている二番目の兄がそれへ名前を書いてくれる。 …父は体が弱かった。 八,九年も,同じ印刷所の校正係をつとめていた。」 その後,延々と書かれる貧しさの思い出。 小学校に初登校した日, 父は「私」の普段着があまりにみすぼらしいので, 古着を釜で染め直す。 その釜を母はよく洗ったが, 翌朝の御飯は黒く染まっていた。 設問の8割が記述問題。

問一 家族内の主人公の位置づけを問う設問2問(10〜20字書き抜きと50字記述)

問二 近所の子どもたちが父を揶揄する「皮肉」の内容説明(40字記述)

問三 「しかし,あまり父のことを語りすぎた」と吐露する筆者の気持ちの記号選択問題

問四 うす黒い御飯の思い出への,「今の私」の心情説明(40字記述)

問五 入学式当日の描写の客観性の理由を, 「前途有望な少年」という語を使い説明(40字記述)

明治時代の貧しい家庭環境から小学校に入学する… それがどれほど家族の期待を背負ったものであるか。 その想像力が鍵。 また,当時の「私」とそれを回想する時の「私」の間には, 父および貧乏に対する認識や感情の落差がかなりある。 それをきっちり計れるかどうか…。 合格者の国語平均点は44.1点(85点満点)しかなかった。 恵まれた家庭環境にある受験生には,痛烈な盲点だったのかもしれない。

啓明舎ではこんなこともあろうかと【貧乏を学びとる】というテーマが, きっちりカリキュラムに組みこまれている。 本文もちゃぁんと6年1学期の隔週テストで出題済み。

〔二〕は,生まれつき顔にアザがある筆者が, 「その顔,どうしたんですか?」と初対面の人から聞かれ, 心傷つく話(ちくまプリマー新書05年7月刊)をふまえた課題作文! そう来たか。でも平易すぎる?

問一 「このような質問」をしないためにはどうすることが必要か(30字記述)。

問二@ 〈言葉によって傷ついた経験,傷つけた経験, あるいは,だれかの言葉によって傷つく友だちを見た経験〉を, 様子がよくわかるように書く(100字記述)。

A この文章の読後の感想を書く(50字記述)。

今年の開成の国語では, 人物がおかれた状況や気持ちを汲み取る実感力が必須。 「人の気持ちを推し量れる」「前途有望な少年」よ, 来たれ! というメッセージと受けとめたい。 …が,しかし,ずんずん読んでわしわし書く! そして情報を精密に構築する「開成スタイル」はいずこへ…。 体育会系的強靭さが維持できるのか,ちょっと心配。

理科

〔1〕生物 スズメガの生態に関する実験結果の読み取り 難易度A
〔2〕地学 天体に関する独立小問と地層の風化についてのデータ読み取り 難易度A
〔3〕化学 水溶液の定性と溶解度計算 難易度A
〔4〕物理 ゴムひもとばねの伸びの計算 難易度A

学校側が公表している理科の受験者全体平均と合格者平均を以下にまとめておきます。

  • 平成18年:受験者全体平均53.9点 合格者平均57.4点(82%)
  • 平成17年:受験者全体平均50.4点 合格者平均55.4点(79%)
  • 平成16年:受験者全体平均54.0点 合格者平均60.5点(86%)

今年も,例年の理科と同じように, 合格者平均と受験者平均の差が少なく,また合格者平均は80%を越えています。 今年は昨年以上に平易な設問が占める割合が多く, 最難関校の入試問題かと疑ってしまうほどでした。 出題分野は,〔2〕の独立小問として地層の風化作用が新たに加わっただけで, 昆虫の生態観察・水溶液の性質と実験器具の使い方・天体・力学計算と, 頻出4分野は全く変わっていません。 悩ましい選択肢問題が一部に見られますが, 大半が即答できる設問ばかりですので, 試験時間40分は充分過ぎるほど長かったでしょう。 国語や算数で失敗してしまい,挽回を狙っていた受験生にとっては辛い40分ですが, それでも1点でも多く取ろうという貪欲さの度合いが合否を分ける, 正に開成らしい出題だったようです。

〔1〕は,定番のガの生態に関する出題です。 過去にもガの幼虫の成長や, アゲハチョウの幼虫の擬態, モンシロチョウの模様に関する出題は多数ありました。 スズメガのなかまのほとんどは夜行性ですが, オオスカシバだけは昼行性で, 他のガと違って羽に鱗粉がなく透明です。 その理由を問うのが最後の設問の40字記述ですが, リード文とガの図から姿をハチに似せる"擬態"が 昼での生存に有利に働いていることに言及させています。 理科というよりは国語の読解力が勝負を分けたと言えます。 むしろ,途中の設問のうち,スズメガとアゲハの幼虫の違いについて, 腹部のツノの有無と目のような紋様の有無の2点を記述させる設問のほうが, 点差が開いたのではないでしょうか。

〔2〕は,前半が月の動きと野口飛行士の活動に関する独立小問で, 後半がアメリカモニュメントバレーでの地層の風化に関するデータ読み取り問題です。 見慣れないグラフを読み取る設問が含まれており, 合格者平均と受験者平均の差の3.5点は,1問の配点を考えれば, ここでの正否が原因ではないでしょうか。 この後の大問2題は極めて平易で, 開成受験者でなくともほぼ全問正解できるほどです。

〔3〕は定番通りの水溶液に関する出題です。 A〜Dの4つの水溶液が, 塩酸・食塩水・石灰水・アンモニア水のどれかを推定する設問が4問つづき, 溶解度を計算させる(暗算で処理できる数値が設定されている)設問が3問続き, 最後はろ過の際にろうとの先をビーカーの壁につける理由を記述させています。

〔4〕はゴムひもの長さやばねの長さとおもりの重さとの関係を表したグラフを利用して, いろいろなおもりをぶら下げたときの伸びを計算させる問題です。 グラフを利用すれば,計算せずに楽に正解を得ることができます。 後半の〔3〕と〔4〕の大問2題を解ききるのに8分はかからなかったでしょう。

今年も理科では大きな点差は開かず, どちらかと言えばごくわずかなミスの数を競い合う試験だったようです。 今後も,開成の理科では,点数の勝負と言うよりも精神力の勝負が続きそうです。

社会

〔一〕 歴史分野 小問23題
〔ニ〕 8月15日小泉談話から 小問22題
〔三〕 東京物語 小問22題

受験者平均と合格者平均の差は僅か2.7点。 合否に影響なし,だけでなく♪絵もない花もない♪と苦笑いで済まされぬ手抜き, クエスチョンの付く問題も散見した。

以下設定に従って問題の紹介とコメントを。

〔一〕A〜Fまでの小リード文で書く時代の取り出し問題。

馬鹿らしいくらい易しい。面白みもひねりも全く無し。

ただし看過できないのは明治期の急激な改革に対する人々の反対運動で 実際に起こったものでないのを選ぶ問7の選択肢。

  • ア 学校制度に反対する一揆
  • イ 徴兵制に対する
  • ウ 地租改正に対して
  • エ 平民とされることに反対する農民や町人の一揆

正確には正解がない。 1872年の壬申戸籍で身分呼称を皇族・華族・士族 (反官軍の藩士は平民。だから平民原敬。この程度は授業でのイロハのイ。) ・平民としたが被差別の人々と同じ平民に括られることに反発した, 特に農民の一揆が広島岡山を中心に起きたことを考えればエは間違いとはいえない。 よもや開成の教師がこんなことも知らないとは考えられないのだが…。

〔二〕もなんということもない。 アウシュビッツを答えさせたり (ポーランドにあるところを突けば面白い問題になったかも) ユダヤ人へのビザ発行の杉原千畝さんを話題にしたりもしたが設問が易しすぎ。 しかも開成が正解なし全員に加点したCの(2)正しいものを選べ。 (下線部が誤り)

  • ア ソ連の解体後ロシアと平和条約を結んだ。
  • イ この条約(サンフランシスコ)では中華民国が中国を代表。
  • ウ 1965年日韓基本条約と同時に北朝鮮と国交回復。
  • エ この条約によって占領軍は一度撤退した。

明らかな,誤りだけ。 いったい何を正解にしようとしたのか。 基礎的な知識だけなのに。

本当にこんな設問を作る教師が授業をしているとしたら 開成の学生はブーイング程度で済まさないだろう。 あ,もしかして全く無視し睡眠タイムにしているかも。

〔三〕東京物語。 関西対策と思われるが, この程度で関西勢を振り切るのは笑止千万。 灘受験生も他校受験を考えある程度の社会はやっているのだし, 発表から2月1日まで時間はあるので"東京"対策もできる。 意表を突いたと思われるのは問10トラックや自家用車の交通量を減らす工夫。 (1)トラック→貨物列車の輸送法,モーダルシフト (2)自家用車→駅前の駐車場→電車,パークラアンドライドくらい。 でもモーダルシフトは小5地理テキスト『日本の地理』でも取り上げているし。

最後にまとめを言うなら, 必死に勉強して2月1日開成の門をくぐり受験する彼等に対する 想像力を働かせて問題を作ってほしい。 この一点だけ関係者は心に刻み込んでいただきたい。


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