武蔵中学校 科目 算数 国語 理科 社会 合計
配点 100点 100点 50点 50点 300点
時間 50分 50分 60分  

算数

〔1〕 立体図形の色塗り 難易度A
〔2〕 平面図形の面積比 難易度A
〔3〕 速さの文章題 難易度B
〔4〕 約束記号・場合の数 難易度B

B4用紙1枚に1問の大問, 問題文以外はすべて解答欄, 問題用紙の枚数4枚(つまり大問4問)というのも平成に入ってからは不変, という頑固さ。 出題ジャンルも文章題といえば和・差・比だけ, 図形は面積比か水槽(そういえば最近,水槽グラフは出てないような…), そして場合の数。 〔1〕で立体の色塗りが出たり, 〔2〕の図が手書きでないだけでもびっくり, というのが本校の算数である。

〔1〕04年〔1〕「三角形の通過範囲の面積」にひきつづいて, ちょっと毛色の変わった問題として, 「立体図形の色塗り」問題が出題された。 しかし例えば(2)や(3)で「図に見えている立方体」ではなく 「図に見えている正方形」を数えてしまったりする以外には, どこをどうやっても間違えようがないレベル。 2年前の問題も, 今までめったに出題されなかった問題が出題されたことよりも, その問題のあまりの簡単さに驚かされたが, 今年も同じパターン。

〔2〕2枚目からようやく「武蔵の問題」が始まる。 平面図形の面積比が2年連続の出題。 昨年の問題は答えがキレイにならないため武蔵らしからぬ後味の悪さが残ったが, 今年は数値もキレイでよい。 相似の単元を教えるときの例題として最適。 学習効果は高いといえるが, 選抜のツールとしては, 簡単すぎてほとんど役に立たないレベル。 ここを間違える受験生は全体の10%未満でしょう。 ところで, ついに問題文の図が手書きじゃなくなったのは, 本校にしてみれば大変革といえるだろう。

〔3〕3種類の速さを組み合わせた文章題。 比の使い方を正確に理解していないと(1)から確実に間違えることになるが, 全体の長さを140とおくと, キレイに解ける。 武蔵中が公表している入試データには, 各大問ごとの正答分布率が「上,中,下がそれぞれ何%いたか」というふうに表示されている。 「上」の比率が10%程度の問題は「解ければほぼ合格, 解けなくても合否に影響なし⇒難易度C」, 30%程度の問題は「解ければ合格に一歩前進⇒難易度BまたはC」, 60%以上の問題は「間違えたらほぼ不合格⇒難易度A」というのがおおよその目安。 本問は難易度レベル的には中程度, すなわち「解ければ合格に一歩前進」なのだが, (1)さえ解ければ(2)を間違える可能性は低いため, 得点差は大きく開いたと考えられる。 事実上, 合格を決めた1問といえる。

〔4〕4枚目の場合の数は「まさしく武蔵」ともいうべき問題。 91年に出題された「○が3を表す」約束記号の問題をほうふつとさせる1問だ。 今年の問題は「○が6を表す」約束記号。 しかし91年の問題が, かっこに相当する演算が定義されていたのに対して, 本問は6が何個,36が何個,216が何個という具合になっているだけなので, 数え上げの難しさはあまりない。

昨年もかなりやさしかったが, 今年もほぼ同程度(またはそれよりやさしいか?)の難易度である。 受験者平均が42.6点に対して, 合格者平均が59.3点であるから, 〔1〕〔2〕〔4〕(1)をとって, 〔4〕(2)の部分点をとるぐらいが, 合格者の平均的なデキ具合, というところだろうか。 しかし本校を志望するからには〔3〕もしっかり解き切れる力をつけて 受験して欲しいものである。

国語

物語 リリー・フランキー『東京タワー』 約5000字 小問8題
(内:記述7題 語句説明2題)

今年も武蔵ならではの,ユニークな出題形式。字数制限なしの記述,他者と自分の気持ちの説明。例年との違いは,1問増えて大問が8つあること,語句を説明させる問題が2題あることぐらいか。しかし啓明舎生は大問8題の訓練は,15本作った予想問題などで繰り返し訓練済み。また本文の『東京タワー』は十分予想されたネタ。啓明舎でも場面は違うが,1月に入って予想問題で数回鍛錬。準備は万端。わが受験生たちは物語の背景は先刻ご承知。筋書きにある「オカン」「オトン」のひびきで一気にスイッチが入り,猛然たる勢いで記述に集中した…者もいたし,唖然・ボウ然とした者も。(まったく気づかなかった者も…。トホホ)さて各設問に沿って解説。問1は本文内容をほぼ要約するだけの問題。「緊張」につながるようにボクの生活事情をまとめる。「父と母は別居し,ぼくは母とのふたり暮らしである。しかも母は夜になると 近所に仕事に出るので,ふたりで食事をしたことがない。だから前野君の家の夕食の食卓のように,両親と姉がそろったような場面はテレビ以外で体験したことがないのでボクは大いに緊張してしまうのであろう。」 問2,前野君の父親の気持ちと経済的状況にふれれば,点数アップ。 「前野君の父親は息子の友人のボクが中学生になるとき, おそろいの腕時計を買ってプレゼントしてくれた。 当時は炭坑も閉山されこの父は経済的にも苦しいはずだったのに, 父のいないボクにまるで実の父のように腕時計を買ってくれたのだ。 そんな切実な感謝の気持ちがこもった品物だけに,いつまでも大切にしているのだと思う。」 問3,ここではあまり点差は出ない。特に「和語」の語彙力が武蔵では問われることに注意。 問4,アンビバレントな気持ちにそれぞれ理由を付けて説明。 「この友人はボクのアルバムを盗んでいたのに,自分の都合が悪くなると, 兄貴の腕力を使ってごまかそうとする。 それはボクにはとてもずるいことに見えるのだが, 同時に窮地にたったときに救ってくれる頼れる兄貴がいるその友人が, 一人っ子のボクにはうらやましい存在にも見えているのだろう。」 問5は,子供の対立への介入を回避する母の気持ちを説明することがポイント。 「親に頼らず自分で解決するよう言ってはみたが, 息子の泣きはらした顔を見ればアルバムを取り返せなかったことがはっきりしている。 しかしオカンは,子供のケンカに親が立ち入るべきではない, いずれ友人が正直に白状して謝りにくるにちがいない, それまでは待っていようと考えているのだろう。」 問6は,恨みや憎悪の表現力が問われる。 「この友人は父や兄に叱られて無理やり謝りに来たにすぎず, 自分の罪を認めたくないと思っている。 それどころか,むしろ自分をこんな目にあわせたボクを逆恨みする気持ちがうかがえる。」 問7は「手打ち」の意味が解らないと苦しい。 「おそらく友人の父が,息子の盗みについて詫びを入れ, ボクの母は,子供のケンカだからといって水に流し, 今までどおりの家族の付き合いをしていきましょうということで問題が解決されたということなのだろう。」 問8難問か。 「当時の筑豊の人々は,プライドをもってその日その日を精一杯暮らし, 自分の人生に満足して生きていた。だから他人の生活をうらやむような気持ちなどまったく無く, 自分のことを『貧しい』と感じることが無かったからだろう。」

今年の武蔵も例年通りの水準でした。 国語については難易のブレがほとんど無いのが特徴。 学校の教務力が安定しているからでしょう。 とにかくていねいに本文を読む,人物の関係性をしっかり読み取る, 気持ちの動きを感知するアンテナをはる, あとは,気持ちを適切に表現する「言葉」を本人が持つのかどうか。 とにかく「武蔵国語健在」。来年も楽しみですね。

理科

〔2〕地学 昭和新山について 4題 難易度B
〔3〕総合 仲間はずれ 4題 難易度A
〔4〕観察問題 みかんネットの網目の観察 記述 難易度B
(注:〔1〕は社会)

例年通り, 社会と理科合わせて8枚のうち, 後半の4枚が理科に関する問題。 試験時間も社会と合わせて60分と例年通り。 受験者平均点は23.3, 合格者平均点は27.2。

〔2〕は, 1943年(昭和18年)12月末から約2年間にわたる火山活動によって 昭和新山が誕生した隆起の様子を, 現地より2.5km離れた海抜53mの地点にて 定点スケッチした記録『ミマツダイヤグラム』をもとに出題された。 (1)では, 3枚のスケッチを見比べてその期間に起こった変化を答える問題。 選択肢が用意されているので慎重に解答したい。 (2)では, 日付ごとに昭和新山の形を記録した「昭和新山成長図(ミマツダイヤグラム)」をもとに, そこに描かれた2地点の変化の様子を記述する。 比較という視点での記述だが, 多くの受験生は「相違点」のみの記述で満足してしまったのではないだろうか。 つまり, 大きな変化が見られた期間がずれている点や隆起した地形の形状の違いなどは 容易に読みとれるが, “2地点ともおよそ250m標高が高くなった”という「類似点」にも目を向けられただろうか。 (3)はミマツダイヤグラムを記録した三松さんがスケッチしている様子を表した絵の中から, 記録に際して行った工夫とその理由を記述する問題。 「観察する位置を固定すること」「視野を固定すること」などに 注意が払われている点に注目したい。 実験や観察においては, 常に条件が一定であることや, 客観的な記録であることに最も注意しなくてはならない。 このことを題材にした設問は, 実験観察をテーマに多くの学校で出題されてきているし, また本校受験者は充分な量の演習をこなしてきたはず。 (4)は「有珠山に限らず, 火山活動の詳しい記録はとても重要です。 なぜ重要なのか説明しなさい。」という設問。 恒例の"君の考えを書きなさい"ではない点が物足りないが, 題意に変わりはない。 地球内部の活動を, 目の当たりにする機会がほとんどない我々人類にとって 「噴火は地球内部を探る最大のチャンス」である。 このような視点で書ければいいだろう。 “噴火口を予測する”や“防災のため”では, 有珠山固有の記録でも(汎用性のある)重要な意味を持つことの説明にはならないだろう。 武蔵のインテリジェンスを感じさせてくれる問題だが, 受験者平均点から推してここではあまり差がついていないのではなかろうか。 その点が寂しい。

とはいえ, 以降の問題から推測すると 合格者平均と受験者平均の差が生み出されたのは 〔2〕であることは確実。 僅かな差ではあるが, 確実に武蔵らしい受験生を選抜したと言えるだろう。

続く〔3〕は, 恒例の4つの中から仲間はずれを探しその理由を答えるもの。 ここで差がつけられるようでは, 受験校の選択ミスと言わざるをえない。

最後の〔4〕は定番の観察問題。 今年は「みかんネット」。 配られたネットをいろいろな方向に引っ張った時にできる網目の形を観察し, 気が付いたことを答える。 やはり「比較」という視点で観察すればよいだろう。

中学受験界, 唯一無二の存在。 巷間の風説にも耳を傾けず, 何があろうとも入試問題の形式を全く変えず, むしろ, より“らしい”セットを出題してきた本校の自信と誇りに感動し, 理科という科目の面白さ, 素晴らしさを教える喜びを再確認させられた。

社会

〔一〕 富士山の噴火に関する理社融合のリード文 約1500字 大問5題(小問6題)

例年テーマ性の強いリード文を読ませて, 記述解答させる形式は今年も同じでした。 本校の社会の問題はいわゆる典型的な受験知識を暗記する勉強では対応できません。 つまり紋切り型の知識をいくら数多く暗記しても太刀打ちできないということです。 まずリード文をじっくり読みこなし, 問われている内容についてその場で思考し記述で表現するという方法が問われます。 理・社の区別にとらわれない, 広い教養が決め手となります。 02年は「水と生態系」, 03年は「森林と人間の生活」が問われ, 環境関連は大きなテーマ。 04年には白馬岳の写真で記述を問いましたが, これも「自然と生活の関連」を考えさせるもの。 05年にはアイヌと山丹人との交易の様子を描いた絵が掲載され, それを見て「北方交易」に開眼させようという出題でした。 つまり「歴史の中の物流と異文化」がテーマだったわけです。

さては・・・自然災害, 特に火山噴火が話題としてとりあげられ「被災と人々の協力」が大きなテーマでした。 確かに04年から今日まで日本でも世界でも自然災害が数多く報道されました。 04年の集中豪雨と猛暑, 日本に上陸した台風の最多記録, 浅間山噴火, 中越大地震, スマトラ島沖津波, 05年春の玄海灘方面の大地震, 秋ごろのアメリカのハリケーン被害, そして05年から06年にかけての日本海側の記録的な豪雪などなど, 自然災害はニュースでも大きく取り上げられましたね。 今回のテーマにはそんな背景もあったのでしょうか。 02年に「中江兆民とボーダーレス時代の国際関係」が問われたのは, 明らかに01年9月の同時多発テロとその後のアフガニスタン爆撃の動向を反映していましたが, 武蔵中の出題はこのように「時局・背景」に対応する面もあるのです。

さて本文では江戸時代の富士山の噴火の記録を複数紹介して, その文章から考えさせたり, また昭和新山が形成されたときの観測の様子の絵を見せて, 観測方法の工夫について考えさせたりしています。 とにかく本校では, 理社の区別にとらわれない着想力や思考力, アイディアの豊かさ, そして表現力などなど多面的な学力を試す試験として, ユニークな出題が続いています。

設問に沿ってみてみましょう。 問1は房総半島から東京湾の海岸線をなぞらせる問題。 武蔵中では当然訓練済みの問題。 この中学校は 「自分の目で,自分の手で,自分の心で確認」 した知識を尊重します。 ですから日頃から地図をノートに写すなど自分の手で しっかり確認した知識が問われるということです。

問2は噴火に関する3つの記録文を比較させて「受け止め方」の違いを弁別させる問題。 危機感の違いや被害状況の違いなどを説明すればよい。 問3は幕府による各藩への締め付け, 強制的な土木工事(例えば宝暦の治水を例にあげて)や参勤交代の義務付けなどを説明すれば オーケー。 問4は「現場の思考力」がもろに問われます。 噴火直後の救命救助, 食料飲み水の確保, 生活する家の再建から長期的には田畑と灌漑用水の再整備, そして社会的なインフラ整備へとつなげていけば大丈夫でしょう。 問5は被災現地への支援として物や金だけの言及に終始しないようにすること。 学校の友人と協力して現地の人々に手紙を書くなど精神的な励ましにまで言及できれば 素晴らしい答案となろう。 被災をきっかけにした文化や人間の交流などへと発想が発展すれば, 解答欄いっぱいに存分に記述できたことでしょう。

今年もいかにも武蔵中らしい出題でした。 テーマも問われている資質もはっきりした学校です。 小賢しい知識でなく, 広やかな教養が勝負のポイントになります。


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