算数
入試形式を変更してから,毎年出題分野と難易度のバランスがよく, 実力差がはっきりと現れる秀作が続いていたが,今年はどうだったか。 まずは1問ずつ検討していくことにしよう。 〔1〕 (3)は「ある月の火曜日の日にちを合計して7で割ると余りが3になった」という暦算 と剰余系の組み合わせ。 (4)も立方体の展開図と「3で割った余り」をからめた問題で, どちらも落ち着いて書きだしていけばなんということはないのだが, これを〔1〕に配置するところがいやらしい。 〔2〕4種類の半円の組合せ。 上手に比を使って計算できたかどうかがポイント。 〔3〕碁石で正多角形を作り, その碁石を一辺の個数で割った余りを考えるという, これもまた〔1〕と同ジャンルの問題。 (3)は正十二角形の一辺の個数が3,4,5…の場合を調べていけば すぐにルールがみつかるのだが, 1枚目だけでこれだけ同じ作業を繰り返させられるのはちょっと苦痛。 〔4〕お馴染みの不定方程式…のように見える。 たしかに(1)は400×□+500×△=5000をみたす整数解の書き出し(つまり不定方程式)。 しかし(2)を同じように処理していくと,あてはまる組合せがほとんどない! 実は問題文の1行目に「毛糸は少し多めに買うことにした」(余ってもかまわない) という1文があり,6行目に「毎日1玉分ずつ編み,9日後」という条件指示がある。 こちらの「縛り」にしたがって, (1)で求めた玉数をこえない範囲で書き出しをしていくわけだ。 問題文を落ち着いて読めば, 作業そのものは大変ではないのだが, 1枚目(特に〔1〕(3)(4)や〔3〕(3)で時間をとられすぎた受験生や, 「不定方程式の解法テクニック」にこだわりすぎた受験生はここで足をすくわれただろう。 〔5〕9つの水そうが3列×3列の正方形状につながっていて, 1つが満杯になると隣の水そうに水が流れ込んでいくという設定。 つながっている容器の数によって流入していく水の量がかわる点だけちゃんと整理しておけば, やはり計算処理そのものは容易。 最後にグラフから「シャドー」を使って処理する問題が配置されているが, ここまで完答しなくても合格点には悠々到達する。 昨年の分析で「桜蔭志望者はこの3年間の出題傾向にあわせて【しかるべき対策】を立てれば, 裏切られることは少ない」と書いたが, やや裏切られた感がある。 1問1問は桜蔭らしい, パターン化された問題を排し, 注意力と頭のやわらかさを要求する良問なのだが, 出題ジャンルに偏りがありすぎる。 これではかつて犯した「数の性質と規則性のオンパレード」という愚の再現ではないか。 「整数と規則性」「速さ」「立体」「不定方程式(書き出し)」という4巨頭のうち, 今年「欠席」したのは「立体」だけだが, 最後の問題も「速さ」というよりは条件整理。 最初から最後まで 「書きだして確認,書きだして確認,…」 という作業を強いられるため, かなりストレスが溜まる。 まあこの程度のストレスをものともしないタフな受験生像こそが 「とっても桜蔭的」だと言われれば,かえす言葉はないのだが…。 国語
〔一〕の漢字の書き取り(「類例・一局面・厳格・規則」を書かせるもの)と, 〔二〕の適語挿入(副詞)問題 (「つかつかと→近寄ってきた」 「じりじりと→動いていっていた」の修飾関係で選択肢を選ばせる)と, 主人公の態度を「やつあたり」とひらがなで答えさせる問題。 この三つだけが申し訳なさそうに「解答らん」の片隅にくっついているという印象。 残りのスペースは「大きな空欄」が六つと「二百五十字の桝目」が占める。 「女子トップ校」の貫禄を示す, いや日本を代表する「私学の雄(?)」として, 堂々の入試問題。 トータルの字数, 実に一万字を越えるボリューム。 生半可な取り組みでは手も足も出ない。 〔一〕は高階秀爾の文章。 学校別特訓最終回に取り上げた人物。 「ヨーロッパ趣味」が顕著な桜蔭の国語対策として, 「読んでおくべき」リストの筆頭に挙げられる。 特訓で扱ったのは『日本近代の美意識』。 学術論文であり, 「小学生が読むのだから」という配慮から, いわゆる「術語(ターム)」や「固有名詞」の類はできるだけ排除して教材を作成した。 ところが,である。 そうした気遣いは不要!と言わんばかりの桜蔭の出題。 3600字の文章中に(中略)を九つ挟み, 最後は(後略)で締め。 脚注は実に十七にまで及ぶ。 「自我の屈辱」を告白する「オクタビオ・パス」には脚注すらない…。 受験生になりかわり「望むところ!」と言いたいところであるが, 十二歳の少女に「丸投げで呈示」するのはいかにも酷ではないだろうか。 設問も容赦ない。 「西欧においては時間は直線的なものであり, したがって次第にもとの地点から遠ざかり, 忘却と破壊をもたらすもの」という内容の解釈が求められる。 明らかにこれは<キリスト教終末論>。 本文にある説明がその査証となる。 「父なる時がしばしば死神と同じく, 大きな鎌を手にした老人の姿で表されるのは, そのためである」。 さらに設問は, ここまで踏み込む。 「西欧の個性信仰の行き詰まりとはどのようなことですか。 現代の社会のできごとと結びつけて説明しなさい。」 大学入試なら「終末論と結びついた黙示録的な傾向が<ブッシュの戦争>を生んだ」 でも解答となる。 いや冗談ではなく,それだけのレベルの課題文であり設問なのである。 一般的な「中学入試」とは次元が異なることを知るべきであろう。 〔二〕の物語文もハード。 昨年までの「物語はオマケ」的なニュアンスは, ボリュームといい, 設問の内容といい, 完全に消し飛んでしまった。 7000字を超える文章を読み, 主人公の気持ちを「本文全体をふまえて,二百五十字」で記述させる。 主人公の,行き場を失って空回りする相手への思い。 結局,相手ではなく自分自身へと撞着を起こす意識。 「自分の言った言葉を耳の底に聞きながら…」とは, そんな主人公の内面を如実に表現したものであることに気づかなければならない。 「東大プレ入試」といっても過言ではない桜蔭の国語。 異次元の世界に分け入る探究心, 知的興奮を覚える感性こそ, 求められている資質に違いあるまい。 理科
4分野から1題ずつ, 知識の総量ではなく, 実験データの読み取りや計算を重視した出題傾向に変わりはないが, 一昨年・昨年・今年と少しずつトーンダウンし, なんだか問題文を読み取るのが面倒なだけの, 特色・出題意図・選抜方針の見えにくい, 悪しき昔の桜蔭理科に回帰しつつある。 〔1〕てこにつるしたおもりを少しずつ水中に沈めていく, モーメント計算と浮力の融合問題…なのだが, 最後の問6で油のなかに沈めた結果から油の比重を求めさせる問題以外は, 面白みも何もない。 だらだらと続く問題文中の数値条件を拾っていくだけ。 どこかで読み違えをすると連鎖的に誤答が続くことになる。 この内容で設問数6は多すぎる。 〔2〕20℃の水のなかに氷を10gずつ入れて溶かしたときの水温変化を調べる実験。 「氷の融解熱=80カロリー」という余計な知識で処理しようとしてはダメ。 おまけに0g→10gのときの変化とそれ以降の変化が違うので, またイライラさせられる。 しかも〔1〕同様, 同じデータを元にした問題が続くから, やはり失敗は連鎖する。 〔3〕「カエルの前あしと後あしはどのひれが変化したものか」 「魚類の血液循環」 「口とえらぶたの開く順序」など, ちょっと踏み込んだ設問が並んでいるが, リード文が設問とまったく関係なく, ただ「知っているかどうか」を問う問題。 生物の出題スタイルにも「変質」が見られる。 〔4〕四季の太陽の動きに関する基本問題。 後半では南半球での日影曲線や緯度の異なる地域での南中高度の比較などが問われるが, これも桜蔭受験生にとっては「常識」のはず。 「こんな問題で合否を決められては納得がいかない」 「なんのために何年も受験勉強をしてきたのか」という, かつて桜蔭坂にこだました受験生の叫びを久々に予感させる, なんとも張り合いのない, コメントのしようのない問題。 昨年の問題分析でのアドバイスのうち, 「環境・時事問題,生物実験, 化学計算の3つは必ず出題されるものと覚悟しておく」は外れたが, 「それ以上に深く理科を学習するヒマがあったら, 算数と国語(記述)に力を注ぎなさい」という 一番大切なポイントは「当たり」(かな?)。 社会
昨年からの相違点は, 大問数が6題から3題へと変わり, それに伴い解答数も10余り減ったこと。 とはいえ, テーマ性のあまりない多岐にわたる設問が続く出題という主調に変化がないせいか, 例年の印象と変わらない。 記述2題, 語句を解答するのが8題で, 残りはすべて記号選択式という設問形式。 〔一〕は桜蔭中学校の校外活動で行く場所 (浅間合宿・東京国立博物館・東北地方)を扱ったリード文。 わずか600字の文章に引かれた, 10以上の下線部についての設問。 取り上げられたテーマ, 分量からも当然のこと, 特に一つのことを掘り下げていくといった問題ではない。 あちら, こちらへ飛んでいく。 選択肢の設問では「すべて正しい場合は え と答えなさい」が健在だが, 実はこれがキツイ。 消去法が使えない。 問3,選択肢「あ」と「う」が正しいことはわかる。 では「い」―「…『成田漁港』ともよばれる成田空港…」。 「女の勘」(桜蔭特訓生の言葉)で解いた者も多かったはず。 他の設問でも, 「…農村に住む武士の中から…選ばれた村役人」, 「東北地方に前方後円墳が造られなかったのは…」, 三内丸山遺跡で「…ヒスイや黒曜石が発見されていることから…」等々…, 自信を持って正誤が判断しきれないような選択肢がいくつもある。 それ故, 「有機栽培の特徴」だの, 「雪舟が活躍していた時代の文化」だの, 「11世紀後半〜12世紀後半の出来事」だのを選ぶ基本問題で失点しないこと。 記述は「一升ます」が示されて, 「検地」を答えた上で, 「このますがどのように使用されたか具体的に」説明する。 「米の収穫高を算出する」あたりを書けばよいのだろうが, 難しくはなく, 記述の訓練云々するレベルではない。 あの国語に対応している受験生ならば, なおさらである。 記述ではもう一題の一行記述の方が正答率は低かったかもしれない。 米作りのカレンダーを示し, 「中干し」を答えさせ, 「この作業は水をどのように調整すること」なのかを説明させる。 そもそも, 前提となる「中干し」を導き出すことが難しい。 〔二〕は一般常識問題ともいえる。 社会への興味を持っているかどうかを問うているといえば聞こえはよいが…。 「日本では,通常のテレビ放送でも,( )放送」が始まりました。 この空欄に「デジタル」と答えることや 「加入電話,けいたい電話,無線よびだし(ポケットベル)の契約数の動き」を 表したグラフで「けいたい電話にあてはまるものを」選ぶことが, 果たして何の力をはかることになるのだろう。 「ポケットベル」は今の子供たちには死語だと思う。 〔三〕は幕末から現代までについて, 正誤問題で問う。 〔一〕の「すべて正しい場合云々」という条件はなく, 正誤が比較的はっきりしている。 それだけに, なにげなく選択肢の文を読んでいたり, 注意力が散漫だったりしてはならない。 思わぬところでひっかかる。 対策については, 去年の分析を引用する。 「まんべんなく基本をおさえるというありきたりの結論しかないが, 30分という時間を考えるとスピード処理が求められることはまちがいない。 解答を書く前の吟味, 時間が残った場合の見直し, これが大切。」 これに付け加えることは, 曖昧な設問にいちいち拘泥せず, とにかく先に進むこと。 自分の得点できるところを確実に得点すること。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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