算数
過去数年を振り返ってみるに, 大問4問構成の超発想力重視型だった03年。 規則性ばかりの04年。 基礎学力を問う問題, 思考力・発想力を問う問題, 処理力を問う問題, これらのバランス, 内容ともに申し分なかった05年。 易しかった90年代後半に逆戻りした感のある06年, ときて今年。 結論からいえば03年と05年の中間ぐらいの内容。 よくできた入試問題である。 〔1〕 98年以来, 実に9年ぶりの計算問題。 「麻布の計算問題の答えはあまりキレイにならない」 ということは注意しておきたい。 〔2〕 速さと比。 こんな問題を間違えているようでは話にならない。 今年の入試問題のコンセプトが基礎学力よりも発想力重視であることは, 普通の文章題が大問7問中この問題だけであることからもわかる。 〔3〕 最大公約数・最小公倍数の性質を扱う佳作。 2数A,Bの最大公約数をgとして A=g×a,B=g×bとすれば, A+B=(g×a+g×b)÷g=a+b, A×B=g×a×g×b÷(g×a×b)=gとなる。 2数の積を最小公倍数で割ると最大公約数が得られる, という知識は麻布受験生なら当然持っているだろう。 (2)の問いは難しくないが良い問題である。 ちなみにイに入る数は48と互いに素な2ケタの整数はすべて正解になってしまう。 〔4〕 単位分数の和の分解は, 巣鴨一次でも出題例があるが, この問題の方がやや難しい。 しかし例があるので, これで答えが出せないようなら, 受けに来た学校を間違えているといわざるを得ない。 〔5〕 一般の試験で出題すれば難易度Cだろうが, 正三角形の格子点をつないで正三角形を作っていく問題は 麻布受験生にとってはジョーシキ。 たとえ内実は過去問題をぶん投げるだけの授業内容であっても, いかなる塾であっても麻布の名を冠する講座で このテーマを扱っていないことはありえない (過去問でもたくさん出題例があるしね)。 2月1日直前の啓明舎HP上でも 「ちょっと気になる問題」として紹介したばかり。 〔6〕 04年普連土に類似の出題があるが, こちらの問題の方が解きやすい (だからといって,そんなに易しいわけではない)。 (1)も(2)も単純に両端をA4個で丸くつなぎ, 途中をBABA…Bとつなぐとレールの数が合わないため, 工夫が必要である。 〔7〕 カードのシャッフル。 どんなにいろいろ分割しても, 絶対に切れ目にならないところがどこになるかを考える。 2分割シャッフルと3分割シャッフルの組み合わせでは, 6分割しかできない, というのが(1)で, これはカンでも埋められるレベルだが, (2)の問いで, はたと手が止まった (あるいは手は止まらないが全然違う答えを書いた) 受験生がかなりいただろう。 6分割で60ごと, 5分割で72ごとだから, 差の12でシャッフル可能 (ということは結局2×3×5=30分割になる) なので1〜12,13〜24,…が一かたまりになる, という話。 誘導にうまく乗って苦もなく正解に達した最上位生と, その他の受験生をくっきりと分ける1問。 90年代前半の麻布を髣髴とさせる切れ味鋭い1問であった。 ところで, 二十一世紀に入って以来の7回の入試問題を並べてみると, 奇数年が豊作 (受験生にとっては厳しい年も…), 偶数年がやや不作, という周期があることに気づく。 来年は06年の内容に逆戻り, はご勘弁願いたいのだが…。 国語
まず出典について。07年中学入試初出の題材ながら、栄東東大T・豊島岡女子でも同時出題された。本文は昭和の経済成長の波に取り残されつつある写真館の祖父の姿を、当時の都電廃止にだぶらせて描いた回想風の小説。もちろん視点は孫である少年「ぼく」。連作短編集『霞町物語』(講談社98年初版)所収。新刊本でもないこの本からなぜ?との疑問がまず浮かぶ。実は昨年7月に同著者の『特別版 地下鉄(メトロ)に乗って』(徳間書店)が話題となり、映画も10月に封切られた。その話題性・鉄道小説系の連想・少年の視点等々から「青い火花」に食指が動いたものと考えられる。去年武蔵中で出題されたリリー・フランキー『東京タワー』や、一昨年ロングランを続けた邦画『ALWAYS 三丁目の夕日』にも一脈通じるノスタルジックな香りがする。舞台は麻布十番のあたり。だからご当地出題とも言える。ハイカラさと下町っぽさが混在する家で飛び交う会話は江戸弁。「うっちゃって」「せん(前)にも」「おめえはやさしさが足んねえ」「おそばでも茹(う)でるからちょいと待ってね」……。極めつけは祖父が都電最後の雄姿をライカのカメラに収めるため、ストロボを焚く指示をする瞬間の「ああっち! ねぇっ! さん!」の合図。ここを何の違和感なく「一、二、三!」と読み取る、そんな言語反射能力の良さも麻布国語力の命。 今年の難度は、麻布標準でいうと<やや難>。全体の記述量は去年とほぼ同量(※05年23行→06年26行→今年26行)。1行約30字程度として、全体の記述量は700〜800字。開成の約2倍近くを書くが、これを負担と思ってはいけない。麻布なんだから! <やや難>の<やや>は本文量が去年の約2割増しになっている点にある(※05年6200字→06年6100字→今年7500字)。ここから来る時間的キツさと言ったら! のろのろ味読しているヒマはない。一読で物語の時間的構成・人物関係・各々の人柄・心情の揺れ動き・言動の理由を同時に読み取ること。そして各設問に対し、ツボを外さない記述イメージをすばやく組み立てること。設問条件に適した文末表現等を的確に、ほぼ条件反射的にできること。以上が重要。 これらの力はもちろん一朝一夕には身につかない。平素の読書量と訓練で体得していく他はない。記述の「コツのコツ」とか「裏技」とか、そんな図式化や畳の上の水練など何の役に立つものか。読んで・書いて・苦しんで、理想の記述と自分のピンぼけの記述との落差を思い知りながら一歩一歩距離を縮めてゆくしかない。啓明舎の麻布特訓の子たちは、その正攻法の練磨をただひたすらしてきたのだ。この3年で21人受験19人合格という、普通ではありえない結果は偶然でも何でもなく、彼らの(そして我々の)汗と涙の結晶に他ならない。 ……と、ついテンションが上がってしまうが、力をきちんと量ることのできる良問を出題し続けてくださる麻布の先生に感謝と脱帽! 麻布を受験したことを誇りに思えるような、試験が終了しても再度丹念に記述し直したくなるような、そんなしみじみとした入試問題だった。 理科
大問が4題、設問総数が30問以上で、1問の配点がわずか1〜2点という形式は例年どおりですが、例年からは想像もつかないほど平易な設問が多く含まれています。また、難解な記述問題が少なく、解き方の方針を立てやすい設問が多いため、高得点も可能だったのではないでしょうか。 〔1〕出だしからびっくりの、顕微鏡の使い方を知っていますかという問題。最初に選ぶ対物レンズの倍率とその理由を記述させる設問から、観察物を視野の中央に移動させる方法の選択へと続きます。ここを間違える受験生は試験会場に紛れ込んでいないでしょう。最後が麻布らしい設問で、精子を生かしたまま観察するためのプレパラートを作成する場合に、透明で粘り気のある液体を加える理由を記述させています。しかし、これも頻出テーマの「生物と環境」のキーワードである"乾燥"から容易に類推できます。 〔2〕難問ではありませんが、定番の桁数の大きい計算や、紛らわしい記号選択が含まれ、最も点差が開いた問題と思われます。前半には、観測データを使った計算問題と、地球は球形ではなく楕円形に近いことを類推させる記号選択問題が用意されています。後半では、地球の1周から話題を広げ、メートル原器に関する出題、さらに1kgや1秒の基準を選ぶ記号選択へと続きます。最後に、自然現象を基準にするのではなく、人工物を基準にすることの欠点を記述させています。今年の問題では唯一麻布らしい問題構成で、扱っているテーマも難度の高い"測定法"に関するものでした。 〔3〕光に関する出題ですが、前問同様に前半と後半では話題が少し変わります。前半では遠くにあるものほど小さく見えることについての記述や記号選択の設問が、後半では赤い光と青い光での屈折率の違いに関係する作図問題が出題されています。興味深いテーマですが、3Dメガネの仕組みを考察させるといった深みはなく、問題の裏にある科学の面白さに気づかなくても、答えることができる設問が並んでいます。麻布特訓の教材では、フレネルレンズの原理や、三角法と年周視差、星までの距離の測り方などかなり深いところまで扱い授業を展開していたので肩透かしを食らった感があります。 〔4〕麻布史上最もつまらない、差がつかない、教養の香りのない、'3ない'問題と言えるでしょう。塩酸とアルミ、塩酸と亜鉛の反応の当量点を表から読み取り、発生する水素の体積を計算するだけの設問が、小設問12題中11問も並んでいます。数値に半端はなく、残りの1題も水素の性質を記号で選ぶだけですから、受験生の大半がここで40点満点12点近くを獲得したことでしょう。入試問題の質の高さから、大学実績が多少落ち込もうが、「腐ってもアザブ」と言われていたのですが・・・。 3Dメガネで浮き上がる写真を見た経験や、海が青い理由を説明できる教養などを持ち合わせていなくても、答えることができる設問が並び、計算問題も楽に解けてしまうものばかりでした。しかし、今年も扱っているテーマは独創的で、入試問題を通して科学の面白さを伝えようという作問者の姿勢は相変わらず伝わってきます。本校を志望するなら、いろいろな科学の話題に触れた経験を数多く積むことが大切なことに変わりはありません。 社会
麻布は麻布であり、永遠(とわ)に麻布であり続けることをアカデミックにデクラレーションしたというのが筆者の問題を手にした瞬間の思い。ただ例年と違うのは格調高い国語そして社会そして算理で最低点が108点(煩悩か!)。54%というのは明らかにここ数年より受験生のレベルがアップしたということ。 それでは各論に入る。問1の空欄補充。Aを早合点の子は藤田東湖が圧死した安政の大地震とするだろう。が18世紀の初めとあるから、これは1703年の元禄大地震(関東大震災)。津波による被害も甚大だった。ただ“町人文化の栄えた”は明らかなミスリード。これでは化政と書いた受験生を責められない。Bも江戸時代の普賢岳の噴火による「島原大変・肥後迷惑」。地歴融合の九州地方の授業で幕府の援助は今回の政府の対応より手厚かったことも述べたが、君達は記憶しているよな。問2・3は点数差し上げ問題。問4の歌舞伎に関する択一。阿国歌舞伎から女形(おやま)の成立まで話しているので大丈夫か。問5はくだんの安政地震が震度6程度であったと推察される理由。地層の歪みや文書に残る記録からの推察が書けるか、どうか。ここらあたりから本格的麻布ワールド。問6鯰絵(地震=鯰、解るよね。)で小判を吐き出すジイさん、すがる女房、小判を取り合う輩どもで、「地震後のどのような様子を描いているか。」地震も火事も経済的に言うなら有効需要の創出とも。家の新築等で大工・材木商などは大繁盛。紀伊国屋文左衛門は実は蜜柑でなく材木で儲けたか、さらには大岡越前の屋根の瓦葺が火事対策で三州瓦・更に柱を太くしなければならないので新築まで話した。問7は関東大震災の虐殺。強制連行ではなく土地調査事業と称して農地を奪ったこと、その意図は貴重な外貨を米の輸入で失うことへの打開策、そして失業した併合後の大韓の農民・政情不安定下の中国の人達が口車に乗せられ、いわば3K・低賃金に喘ぎ、そこに悪質なデマが流れ、負い目を持つ日本人が自警団を組織してしでかしたこと。この事件は世界的非難を浴び政府はラヂオの普及に乗り出したことまで話した。問8は私にとってやや悔いが残る。というのはこの1944年の三河大地震は『日本近代は何を隠してきたのか』−小松和彦著−で開成特訓の国語でモロに題材にした。95年阪神淡路大震災・オウムから論じているが問5の設問で戦時下政府が報道管制した理由を書かせている。論説文だが麻布特訓でも目通しだけはさせておけばということである。 筆を急ぐ。問9は神戸のあらたな震災弱者(障害者・高齢者などの弱者は除く)を書く。言葉による障害、従って神戸の外国人滞留者が書けるか、どうか。問10、仮設住宅に入った高齢者に生じた問題。ハコモノ行政の限界、心身のケア。問11は災害に対する行政の問題、更には地域社会のあり方。リード文に自治体が箸何本まで県や国に届を求められる事実が書かれている。地方自治は補完性の原理から出発することを話しておいて良かった。問12はやや疑問の設問。“交通が復旧しても損失を出し続けた産業は何か”。ビルが倒壊し情報機器は壊れデーターも全て飛んだのだから全ての産業であり、特定の産業という設問は?と思うし港湾も交通に入れるか微妙。従って模解は金融など三次にした。さあトリ。科学や技術の限界が明らかになるとはどういうことか、具体例を挙げて説明せよ。更に君が科学者・技術者であったとすればどのような態度で対象に接し社会貢献できるか、200字以上240字以内。難しそうだが『ゲド戦記』や原爆で口を酸っぱくした“科学の光と蔭”。我が塾生にとって“十八番"の筈。バイオやクローンを例にし、“蔭”を書き、科学者・技術者が“蔭”の部分を発信し且つ自戒すること。ああなんて心地よい麻布ワールドだこと。“最高っす”。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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