算数
これで3年続けて大問4問構成。 過去2年は問題数を増やしたかわりに難易度が極端に下がり, 受験生全体平均/合格者平均が それぞれ50.6点/65.8点(05年), 55.1点/71.1点(06年)と 極端な高得点勝負(=ミス勝負)になったが, 今年は45.5点/60.4点と,数値をみる限りではやや難化している。 1問1問の問題がすべて中難度以上で統一されており, 確実に得点できそうな設問が少ないこと, 出題ジャンルが「算数に苦手意識をもっている受験生が避けて通りたいモノ」 揃いであることは確かである (昨年までは「少し時間をかけて手を動かせば4年生でも解ける」 タイプの問題が1問ずつは含まれていた)。 しかし, この4ジャンルを「避けて通りたい」と思うような受験生は そもそも開成に向かうべきではないし, なにより4問とも「どこかで見たことのある」 (というより,つい最近他校で出題され, 『中学への算数』に掲載されていたもの)ばかりである。 「努力が報われるオーソドックスな問題」と評すべきなのかも知れないが, でも,だって,天下の開成なんだからさ……(ブツブツ)。 さて各論に移ろう。 〔1〕 長方形の辺上を直角三角形が回転していくときの通過範囲を作図し, その周囲の長さを求める問題。 3回目の回転半径が5cmであることに気づかないと 「重なり」の部分が処理できなくなる点と, 2回目と3回目の回転角度がわからない点(2回分の合計はわかる)が, 1問目の問題としては少し意地悪。 〔2〕 うずまき状に数字を並べていく数表。 左上と右下の隅に奇数と偶数の平方数が 並んでいくことを利用して解くのだが, もはやこれは「知らなかった」では すまされない「典型題」に属する。 〔3〕 3点が円周上を回転する問題。 1周の長さを所要時間の最小公倍数に設定すれば, (1)(2)はあっという間に解ける。 (3)は「3点を結ぶと正三角形になる」時刻を求めさせる問題で, 1点を固定して「相対速度」で2点を動かし, さらにそこから速さの比を使ってゴショゴショ…という, まあ,ちょっとした「裏ワザ」を使わないとけっこうタイヘンなのだが, これも桐蔭学園などで出題された「有名問題」なので, 「難易度C」をつけるかべきかどうか微妙なところ。 他の3問よりは正答率が低いだろう。 〔4〕 直方体を3点で切断して 三角すい台を作る問題。 数値設定もシンプルだし, 与えられた図が使いやすいので, 〔3〕よりも解きやすかっただろう (切断系の問題は, どちらからみた見取図を提示するかによって正答率がかなり変化する)。 (2)は三角すいの展開図を完成させる問題で, どの面をどこにつなげるかで判断に迷うかも知れないが, 解答用紙に与えられた「枠」がこれまた「親切設計」なので, よほど時間的に追い詰められていなければ気がつくはず。 さて,この問題のどこで15点の差がつくのだろう (「合格者」と「不合格者」の平均ならばさらに差は開く)。 「作図」が2問あるため, 「考え方」を記入するスペースは例年に比べてかなり狭い。 となると〔2〕と〔3〕か? 初期段階でなんらかのミスをすると枝問3問とも連鎖的に間違えるし, 部分点もあまり期待できないし。 「算数脳」をもった異才より, コツコツとたくさんの問題を解いてきたガリ勉君にとって 有利な出題だったといえるかもしれない。 とはいえ, 毎年猫の目のように出題傾向や難易度を変えてくるのが開成。 毎回おなじみの総括だが, 「過去問対策」に囚われることなく, 他校の良問・難問も含めた幅広い学習が求められることは間違いない。 国語
2月1日1時間目,試験開始の合図がある。 この時のため,どの受験生も切磋琢磨してきた。 緊張の一瞬だ。 逸る気持ちをおさえ, 落ち着いて受験番号と氏名を書く。 さあ問題を解くぞ! まず全体状況を把握しなくては……。 問題用紙をめくる。 すると4枚目で突如設問用紙の3分の1を占める <犬ニ匹とネコ一匹の絵>が目に飛びこんでくる。 えっ?何?これ。 左には牙が鋭く目つきの悪い大きな犬。 真ん中には何を考えてるんだか分からない顔のお座りネコ。 右にはやや情けなさそうな表情の小ブルドッグ。 犬どうしは視線をぶつけあっていて不穏な雰囲気が漂う。 この絵が問題を解く上で重要なんだろうか……。 受験生の心に不安がよぎる。 だめだ,落ち着かなくては。 あれっ? 大問が一問しかない。 今年は説明文がないぞ。 下書き用紙にマス目もない! 縦線だけだっ。 解答用紙も一瞥する。 やっぱりマス目がない。ってことは字数制限無しの記述なんだ。 これはラッキー? それともアンラッキー? 意外だけど, たじろいではいけない。「開成は過去問ハズシをしてくる何でもアリの学校だ」って, これ,開成受験者の常識。 さあ気持ちを立て直そう。 まず漢字の読み書きをトメ・ハネ・ハライに細心の注意を注いで書く。 語句の選択問題を慎重に選ぶ。 あとはオール記述だ。 解答欄をビシバシ埋めてゆくぞ。 ……というのが,受験生に寄せたココロの波風であったろう。 以下,問題分析をしよう。
本文は筆者が飼っていた小型のブルドッグ「鉄」と大きな闘犬「ゴリ」,
それに黒猫(名前無し)をめぐる回想が中心。
難解さはない。
江藤淳編『日本の名随筆78 犬』(作品社1989年刊)からの出題で,渋い名品。
具体的描写中心で本文量も4400字で過去最短。
読解は容易である。
問1は漢字の読み書き5問と, <応える><うさんくさい><思い切った>の意味内容を5択から選ぶ設問。 辞書的な意味と文脈上の意味の両者をカバーする答えを選べばよいだけで, 理知的に判断すればオーケー。 問2以降は記述が5問。1問につき記述文字数は約80〜100字程度だから, 総量400〜500字程度を書く。 字数指定がないので,要約に苦しむ必要はない。 設問条件はどうか。 最初の1問は「本文の○○部分に書かれていることばを用いて, わかりやすくまとめなさい」。 次の2問は「本文中に書かれていることばをもとにして, できるだけ自分のことばでわかりやすく説明しなさい」。 4問目は<筆者の考え>を,最後の1問は<筆者の気持ち>を, 各々「できるだけ自分のことばでわかりやすく説明しなさい」。 8割は本文中でおさえるべきポイントを押えたのち, 本文の切り張りでない表現に書き換えろ,という指示。 逆に言うとポイントさえハズしていなければ, どのように書いてもマル。 これだと細かい採点のしようがない。 無難に書けていれば「中」。 語彙力やセンスが感じられる記述なら「上」。 文がねじれていたり,<てにをは>・文末に難があるものが「下」。 ここから誤字脱字などを減点して点が 決まったのではなかろうか。85点満点で受験者平均が50.2点, 合格者平均が58.8点というユルさ。 開成ふんどしは,キリリと締めてこそ! 理科
学校側が公表している理科の受験者全体平均と合格者平均を以下にまとめておきます。
例年通り,合格者平均と受験者平均の差が少なく, 合格者平均は80%を越えています。 しかも,近来まれに見るほど平易な設問ばかりが並びました。 出題分野は,水溶液の性質・昆虫の生態観察・天体と, 頻出3分野に電気が加わっただけで大きな変化はなく, 大半が即答できる設問ばかりです。 算数で失敗してしまい, 挽回を狙っていた受験生にとっては辛く長い40分だったに違いありません。 〔1〕定番の水溶液に関する出題です。 「塩酸とアルミニウムの反応で発生する気体は何か」 という超基本問題から始まり, 「ムラサキキャベツからとった汁を使うと水溶液が 酸性かアルカリ性かを見分けられるか」という超基本問題で終わります。 途中に中和に関する計算もありますが, きわめて易しく,解き終わるのに5分かかるようでは 開成受験者とは言えません。 〔2〕「ミツバチの体に6本の足を書きたせ」という作図と, 「(めしべ)の先に(おしべ)の花粉がついて受粉する」 という穴埋めから始まります。 後半の設問は,横軸にミツバチの体重を, 縦軸にミツバチの匹数をプロットして表した, 見慣れないグラフを読み取るものです。 しかし,体重の増減はすべて巣外で獲得したみつによるものというルールを守れば, 簡単に解けるパズルと言えるでしょう。 途中に「イチゴの実が大きく育つためのミツバチの働きを30字以内で答えよ」 とありますが, 今年の出題でやや難しいと思われた唯一の設問でした。 イチゴが偽果であることは知っていても, 全ての胚珠に花粉が受精し種ができないと, 形がよく大きなイチゴができないことを 知っている受験生が多数いるとは思えません。 最難関校であれば, 思考力で勝負する難問に仕上げて欲しかったところです。 〔3〕頻出の天体分野ですが, あまりにも簡単で, ここでもまったく点差が開かないでしょう。 11日月の見える時刻を選び, 月から見える地球の形を選び, 最後は「昨年,惑星でなくなった天体の名前を答えなさい。 むずかしい漢字をつかわなくてよい。」という設問で終わります。 〔4〕「電流計と乾電池と豆電球をつなぎなさい」から 「乾電池1個に2個の豆電球を並列につなぎなさい」 という作図問題へと続きます。 後半では電池の内部抵抗に関わる悩ましい設問が続きますが, 時間はたっぷり残っていますので, リード文をよく読めば答えが書いてあることに気づき, 正解にたどり着けます。 今年も理科では点差は開かず, ごくわずかなミスの数を競い合う試験だったようです。 やはり,開成の理科は, 思考力よりも気力がものを言うようです。 社会
うぬっ,この問題で1645字を書かねば ならぬのは辛い。真正面から取り上げる 設問もなく,また取り上げたら「何をそんなに力んでいるの。」という声が 西日暮里の辺りから届きそう。全体平均と 合格者平均の差は4.1。合否への影響はさほどと言って 構わないでしょう。西日本勢を振り落とすべく お上から“社会で差をつけろ”のご下命。いやいやながら指示には 従ったものの設問上の工夫は“面倒くさい”で上記の如し。ただしリード文については “決して力のない教師ではない”というプライドを のぞかせている。ということでこちらも順番に従って適当なお付き合い。 〔一〕の問1,のっけから日本の最東端と最南端。答えは むろん“東京”。西日本勢に“やあだなあ”と戦意を 挫く意図か。でも関西・九州は“やっぱり”程度にしか 感じないと思う。問3の狭山丘陵(平仮名でさやまと答える)は 関東勢も書けたか,どうか。問4は谷津干潟が 習志野市にあることが記憶されていれば なんということもない問題。あとはデーター関係で 東京・成田・千葉の各港当て,関東 内陸工業地域当て,問11で“里山”を 答えさす程度。差はつきません。 〔二〕は道灌山から俯瞰した 日本の歴史。縄文から戦前まで。でも問3の 貝塚から出土した動物の骨で“誤っているもの”答えは ゾウ。少しはひねってくださいよ。問10は“板碑”材料と なった石の運搬ルート。秩父からと書いてあるので 荒川ルートと一発で解る。授業でも荒川は,荒川放水路・荒川の水利権を 東京が買ったという話は薀蓄。問14,江戸時代に開成の周辺で 野菜栽培がさかんだった理由。記述にすれば良かった のに4択。“本郷もかねやすまでは江戸のうち”郊外。糞尿を 肥料として利用したこと。これも薀蓄。滝沢馬琴が 自分の糞尿代が安すぎると町奉行所に訴えたこと。長屋の共同便所は 大家さんのもの。武家屋敷、特に上屋敷の 糞尿代が高いことまでやりました。ああ そういえば“火事と喧嘩は江戸の華”も出題されましたが,ただ火事と 答えさせるのでなく,理由を記述させたり,火事は有効需要の創出でも あったことなどを書かせれば面白かったのに。事実このテーマは 麻布・海城で真正面から取り上げているのに。 〔三〕も全て選択問題。問1・2は在日外国人在外日本人の数と 所轄官庁,入管法で法務省・在外は外務省,数も在日韓国朝鮮の人たちが 70万を越えていることを考えると 200万はわかるはず。問6は面白い。韓国朝鮮籍の人が 登録者数の過半を越える府県選び。山口か群馬か。“ウー,平和, ルパンV世・アントニオ猪木”で群馬と答えた君は偉いぞ。 だが残念,正解は山口。長州閥を考え,日本統治下,農園経営に 山口県人が多かったこととか,関釜フェリー (関釜連絡船)さか上って,下関条約やまた下って 戦後のどさくさで博多や下関から母国に帰る筈の人々が 帰るに帰れなくなったことなどを考えることですな。 アップトゥデート派かオーソドックス派か。でオーソの勝利 ということかな。問5はエストニアとグルジアの 面する海。バルト三国の第二次大戦下の 悲惨な歴史。グルジアといえば葡萄で ワインやブランデーで解るよね君。あっそう問3の ブラジルの人が多い県もちょっとだけ。出稼ぎだから 工業の盛んな県で“静岡”そして全然“トリ”になって いないのが問8,ロシア語・韓国語による あいさつ当て。ハングル語 (日本風に言えば韓国朝鮮語の平仮名だよ〜ん。)や ロシア語はギリシャ語が源。まあここまで 知ってなくてもいいか。ということで そろそろ筆を置くタイミング。 陽は西に暮れ,変わらぬ日常であった。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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