算数
試験時間60分,設問数13は例年通り。〔1〕に小問集合をおき,他に大問を3問というここ2年間続いている出題形式は今年も踏襲された。難度に関しては,受験者平均58.5点(48.8%),合格者平均69.9点(58.3%)で,ここ数年間と比較すると,小問で1問分の難化が見られた。 〔1〕は答えのみ答える形式の問題。(1)は「これから理系科目の試験がはじまるよ。科目の切り替えは計算でしてね」という学校の愛情。(2)も「もう少し計算練習をしようか。でも,円周率はまとめて計算しようね」という,クドいくらいの学校の愛情。この愛をいらないという受験生は,本校からもいらないといわれるだけ。(3)は0000から9999までの数のうち,5を2個以上含むものの個数を求める問題。解答のみ答える問題なので,2個の場合,3個の場合,4個の場合の和で求める方法と,全体から0個の場合と1個の場合を引いて求める方法の2種類の方法で答えがあっていることを必ず確かめておきたい。(4)は1組の向かい合う角が60°のひし形6枚で囲まれた立体の展開図を描く問題。つぶれた立方体をイメージするのはたやすいが,60°の角が3つ集まってできる頂点と,60°の角が1つと120°の角が2つ集まってできる頂点があり,それに注意しながら展開図を考えていかなければならない。(3),(4)は正解するのに慎重さが必要で,序盤にして早くもこれらの問題が合否を大きく左右したことだろう。 〔2〕は素因数分解を利用して解く問題。(1)1から2007までの整数の積の末尾に0が何個つくかを考える問題を間違える受験生はよもやおるまいが,(2)@1から10までの整数の積を一の位から順に見ていったときに初めて現れる0以外の整数を考える問題を,気合と根性(といっても,大していらない)で解いた受験生は,A121から130までで求める問題に手が出なかったろう。このAを,素因数分解を利用してきちんと解いた受験生は,合格へ向けて大きなアドバンテージを得られたと見る。 〔3〕は反射と範囲の問題。要は,エアホッケーで壁のどの部分に当てるとゴールできるかを考える問題。(2)のパックの通る範囲を図示する問題を経て,(3)で相似な図形の面積を求める問題へと変貌していくところが面白い。この(2),(3)を正解できると,合格をほぼ手中に収められたはずである。 〔4〕は本校の運動会で伝統的に中1が行うことになっている団体競技『輪抜け競走』に関する問題。運動会の全部の種目を見た受験生は「あれだ!」と思ったかもしれない(そんなヤツいないか)が,地道に丁寧に時刻毎にただただ調べていく,気だるいだけで何の爽快感もない問題である。対角線の長さが24mの正方形があり,対角線の交点を中心に半径6mの円が描いてある図形の4角から,交点においてある輪をくぐろうと4チーム(本校の運動会は4色で争われる)がリレー形式でスタートする。その際,輪に誰もいなければ,自陣に近いところに輪を引っ張ってこられるというもの。(2)@で第1走者がスタート地点に戻ってきた時刻を求めさせているのは,Aで第2走者が……第3走者が……として求めなさいという誘導なのかもしれないが,合格したければ(2)Aに時間を費やしてはいけない。運動会の種目としてなら,作戦の立て方がたくさんあって面白いかもしれないが(じゃぁ,今度のサマースクールでやってみようかしら!?),こんなことを考えたって楽しいはずがない。時間が無限にある4年生,5年生はやってごらん。 本校の算数は,数学的な発想を問われること多いのが特徴である(本年でいえば〔2〕〔3〕など)。本校志望者は文字式の扱いや簡単な証明問題に慣れるべく,数多くの数学的な問題に触れておきたい。 国語
昨年の翻訳物から打って変わって「国内帰還」。もともと昨年の翻訳物は99年以来久しぶりだったこともあり、今年の「日本回帰」は必然と考え、予想問題を20本ほど準備して待ち構えたが、的中はしなかった。ザンネン! さて設問形式はと見ると、例年通り物語文1題勝負。漢字、語彙力、選択肢、そして記述の量などのバランスも例年通り。字数制限記述でどれだけ高得点できるかが勝敗の分かれ目なのは従来通り。物語の筋は、恋愛ものと親子もの並列で進行する。父親と主人公のぼく。イヌのヨウコを父親は「妻」といい「ぼくの母」だといっている。やや奇妙なタイプの父親だが、文中では理解しやすいタイプの父ととしてふるまっている。話はヨウコが失踪し、親子で捜索中に、三浦という女の子が主人公の自宅を訪れるところから始まる。今日はバレンタインデー、つまり三浦は、ぼくにチョコレートをプレゼントに来たのだ。しかし三浦を意識してなかったぼくにはその意味がまったく理解できない。だいたいが三浦はチョコレートを男子にあげるようなタイプの女の子ではないのだ。「なぜくれるの?」とかいうトンチンカンなやりとりの途中、父親がヨウコについての重要な情報をかぎつけて帰宅、さっそく3人で近くの公園に捜索におもむくという運びに。国語が苦手な受験生でもここまではかなりすいすい読み飛ばせるだろう。 で、三浦はぼくの予想をこえて真剣に公園の中を探し回り、父親も三浦に力づけられる。このへんから読者は三浦の評価を変えることになる。結局ヨウコは発見できなかったが、三浦に感謝する父親に命じられて、ぼくは三浦を自宅まで送っていくはめに。いやいやながら同道する。ここからの道行きでのふたりの微妙な気持ちの駆け引きは、算数少年タイプにはなかなか読み下しにくかったであろう。「………サンキュ」(ぼく)「なにが?」(三浦)「さがしてくれて…」(ぼく)「なーんだ」(三浦)という気もちの交錯を楽しめるくらいの「大人」ならばこの国語の問題は90点を越えるであろう。ついに「あんたはいじけてるよ」とぼくを責める三浦。そしてぼくは彼女にいらつき怒鳴り返す。「いじけてるなんていうな……」。と、ここでぼくは興奮なのか疲れなのか突然ゲロを吐き出す。唐突と言えばすべての話の運びが唐突なのだが、それは昨今の小説に問うても致し方のないこと。突然のゲロの場面から、三浦は慈母のようにぼくをいたわり「(告白を)がまんしなくてよかったと思っている…」などと妙に大人びた独り言を残して去っていくのだが、残されたぼくは「なにをいわれたのか、さっぱりわからない」ぴよぴよ状態で「三浦の後ろ姿を見送った。」と、まあ、こんな筋立て。さてチキンのようなぴよぴよ少年が、妙に大人の少女に振り回されるという筋書きは、実は当校の「隠された欲望」を暗示している。10年ほど前に出題された、小学4年生のぼくと転校生「杉本裕香」の物語、「紙の鍵盤」は今年のシチュエーションに似ている。圧倒的に「大人」な女の子と幼い少年との「不均衡な淡き関係」。女の子を謎のように見送る少年のたじろぎは、どうやらお好みのテーマ、考えすぎ?2年前までは「親子関係の再形成」「友人関係の組み直し(時に障害のある友人)」などが、頻出のテーマ。昨年の物語文は新傾向を示し、今年の本文は今風の「よわっちい少年」と「強い少女」との淡い関係として、「抑圧された欲望が回帰」。とすれば練習は目標を立てやすい。テーマを押さえつつ、あとはひたすら「文字数制限記述」これです。 ところで失踪した犬のヨウコはついに姿を現さずに場面は終わり、往年の名画「愛しのシバよ帰れ」を思い出させる。「不在記号の操作」を逆手に取った巧妙な手法なのだが、これって分析と関係…ないか。 理科
試験時間40分,大問数5,設問数26は例年通り。受験者平均45.8点(57.3%)も例年並。 〔1〕はさまざまな分野からの小問集合。落とすとしても1問くらい。 〔2〕は,もはや恒例となった長いリード文がまったく意味をなさない気象の問題。リード文をまったく読まなくても,問題を解くのに影響しない。問題は平易で1問たりとも落とせない。 〔3〕は吹き矢を吹いたときのデータから,より遠くに矢を飛ばすための方法を考える問題。設定自体は面白いが,問題は以下に示す通り難しくない。注意深く正解を積み重ねよう。(1)は測定値の最小値と最大値を除いた平均を用いて誤差を小さくすることを答える問題。(2)はデータをグラフに書き写すだけの問題。(3)は矢の飛距離が筒の先端から飛び出す『速さ』によることを答える問題。(4)は矢の飛距離が(3)に加えてその継続『時間』にもよることを答える問題。(5)は瞬間的に息を吹いたときの飛距離が継続的に息を吹いたときの飛距離よりも短くなることを答える問題。 〔4〕は,もはや恒例となった長いリード文がまったく意味をなさない生物の問題(あれれ,どっかで見たことある文だ……)。やはり今年もリード文を読み飛ばしても問いに答えることができる。ちなみに,問題はカラスの生態に関するもの。都会に住むハシブトガラスが,郊外に住むハシボソガラスと比べて,声の種類が多く,よく鳴く理由は,威嚇,警戒,注意など,郊外のカラスに比べ,都会のカラスには伝えるべき情報が多くなるからか。また,駆除したカラスの数に比べて個体数の減少が緩やかなのは,カラスが繁殖するのに十分な量のゴミを人間が出しているからか。 〔5〕は水と油の性質の違いを利用した文化祭での化学部の実験に関する問題。化学分野を出題したかったのだろうが,実験の内容が物理分野に近かったため,結果として入試問題のバランスを悪くしている。入試問題としてのセットを考えると,ここにはきちんとした化学分野の問題を出題して欲しかった。水,天ぷら油,灯油の密度の違いから,同体積ずつ1つの容器に入れたときの順番を答えさせる問題,その容器の中に氷を浮かべたときの様子を図示する問題とあるが,目盛りが振ってあるにもかかわらず,それを考える必要はきっとない,っていうのはいかがなものか。また,最後の問題は,親水性・親油性に関する実験問題だが,問題の設定だけで結果を推測するのはほとんど不可能。文化祭で化学部の実験を見た人はラッキーだったね,それ以外の人はアンラッキーだったね,っていうのはどうなのよ? なんか不親切でわかりづらい入試問題だなぁ〜というのが,このセットを解き終えたときの率直な感想。設定自体は悪くないのだから,もう少し実力差を反映できるように,誘導を工夫した問題に仕上げて欲しかった。いつもはツマラナイ,ツマラナイと愚痴っておいてこんなことを言うのもなんだが,面白くしようとして失敗するくらいなら,いつものツマラナイ,フツウの問題がいいなぁ…… 社会
今年も例年に違わず、解答数の3分の1が記述問題と、大きなウエイトをしめる。例年見られるような「凝った」設問こそ減ってはいるものの、記述問題の高配点を考えれば、記述の出来・不出来が勝負を決するポイントとなることは言をまたない。今年は3分野きれいに分かれた3題構成。以下、各設問に沿って記述問題を中心にみてみよう。 〔一〕は昨年に引き続いて、外交史。ワカタケルの手紙から、第二次世界大戦後の国連加盟、昨今の環境破壊までがリード文で語られる。問1から記述問題。「稲荷山古墳から出土した鉄拳に刻まれていた文章によってわかったこと」を、資料をもとに答える。大王の支配範囲について記述すればよいだろう。問2「遣隋使や遣唐使は、仏教以外に何を中国に学びに行ったのですか」、問4「秀吉の朝鮮出兵が二度にわたって行われた目的は何ですか」などの諸問のあと、伊能忠敬の全国測量について、「全国測量を幕府の事業とした理由はどこにありますか。忠敬が生きた時代のことを考えながら説明しなさい」とくる(問6)。18世紀後半以降の「列強接近」とリンクさせればよく、例年のごとき凝った設定はない。間に挟まれる設問は、第二次大戦後の独立国として「インド」を答えさせる問7辺りがやや苦しいが、他は平易。元寇で使用された火薬兵器の名を答えさせる問3も、本校受験生ならば難なく「てつはう」と書けたはず。問5、17世紀半ばにアイヌを率いて和人と戦った人物に至ってはなんと選択式、それも選択肢はシャクシャイン・コシャマイン・アテルイ・川村カネトから選ばせる。勿論シャクシャインだが、川村カネト氏の名前がなぜここに? やはり差がつくのは、記述問題と結論してよかろう。 〔二〕東京を中心とするメルカトル図法・正距方位図法の2枚が示され、貿易と地図に関する設問。正距方位図法で東京からの方角と距離を特定させ、該当する地点をメルカトル図法の地図上から選ばせるのが問4に3つ、問5では正距方位図法の周縁部が何を表すかを答える(正解は対蹠点)。地図の原理に通じていれば難なくこなせるが、世界地図は苦手とする受験生が多い分野。ごまかしのない学習を続けてきたか否かが試される。記述は「多くの食料を海外からの輸入に頼って」いることの問題点を「安全性」以外の観点で説明させる問2、日本の辺りを「極東」と呼ぶ理由を書かせる問3。ナントカのひとつおぼえ、あるいは用語のやみくも暗記だけに終始しているのでなければ書けるが、そうはなっていないのが多くの受験生の実情であろう。 〔三〕日本国憲法については、条文中の「象徴」「内閣(の助言と承認)」を空欄補充させるだけ。民主主義については、多数決の採用における留意点を記述させる。選挙へと話題は進み、「住民が関わることのできる地方自治体の選挙」の数を数えあげる(正解は4)、そして投票率の向上策についての正誤問題。差はつきにくいだけに、「勘違い」などの取りこぼしがこわい。 難問ではなく、特別に深い知識は要求されてはいない。となれば、問題の構成からして、記述問題が大きく勝敗を分けるという傾向は変わっていないとの分析が妥当。設問の条件を冷静に読み取り、「何が正解として要求されているのか」という観点から考えて、解答の基本ラインを確定する。その上で、「点差」をつける工夫を体得する。このスキルを、特訓などで繰り返し訓練して身につけることが合格への王道だ。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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