算数
昨年は「整数・規則性」のオンパレードという偏った出題だったが、今年は04・05年度に近い、バランスのいいセットになっている。 〔1〕 計算2題は相変わらず面倒。必ず「小数・分数まじり」で、どちらで処理するかの判断が問われる。さらにもう1問。与えられた文章をそのまま式にして計算する、という不思議な問題。最後の(3)は桜蔭の定番(?)である「箱に入ったお菓子の値段」問題だが、不定方程式ではなく単なる順算。ただし問題条件が読みづらくてイライラする。こんな訳のわからない料金設定にしたら、店員だって困るだろうに。 〔2〕 三角形と半円の重なった部分を求める問題。図形そのものは平易だが、答えは@が小数第3位まで、Aが小数第4位までになる。やはり小数・分数のどちらを選ぶかの判断が必要。 〔3〕 これは平易な速さの比の基本題。やはり分数解になるが、ここを落としているようではオハナシにならないだろう。 〔4〕 ここで、かつては桜蔭算数の「華」だった場合の数が登場。「ゴールを超えてしまう場合は超えた分だけ戻る」というスゴロクは頻出だが、今回は「超えてしまう場合はそのまま止まっている」という設定。(2)「3回であがりになる目の出方」は「進・進・進」「止・進・進」「進・止・進」の3つに場合わけをすればよいのだが、2回目に「止まる」場合は1回目の出目でさらに場合わけが必要になる。学力差があらわれる軽い良問。 〔5〕 2種類のタイルを交互に方陣状に並べていく規則性問題。一見して「平方数」とわかるので、(1)(2)はやさしいが、(3)はちょっと手強い。(4)がまたやさしく(3)とは一切連動していないので、残り時間次第では(3)を飛ばすのが正解か。 〔6〕 5種類の正多面体を切り開いて展開図を作るときに、それぞれ何回「切開」するかという問題。展開図の面と面は必ず1辺(だけ)でつながっているから、たとえば正十二面体なら「つながったまま」の辺が11本。辺は全部で30本あるから「30−11=19」でオシマイなのだが、まともに展開図を書こうとするとタイヘンなことになってしまう。良問ではあるが、まったく同じことを4つの立体について答えさせるという設定はいかがなものか。04・05年度のラスト(いずれも立体の切断)のように、もう一工夫していただけると有り難かった。 これで入試形式が変更になって4年目。昨年を唯一の例外として、「速さと比」「求積(図形の移動絡み)」「立体」「規則性」が必須、「不定方程式」「書き出し」「場合の数」から1問、そして計算力重視、というように、出題傾向が安定してきた。いずれも「フツーのオンナの子」には「鬼門」に近いジャンルなので、ますます「フツーのオンナの子」からは敬遠されてしまうのではないかという危惧もあるが、…まあ、余計なお世話ですよね。 国語
私立女子中のトップ校として圧倒的な位置に立つ桜蔭。この入試問題と解答用紙を見るとき、「他の追随を許すまじ」とする矜持と「どこまでもゆくんだ」という極北路線がいよいよ強化されている感を覚えずにはいられない。例えば女子学院なら例年多量の選択問題攻めで、精密機械のようなスピードと精緻な読解力を要求する。また雙葉なら敬語の使いこなしに特徴のある知識・記述混合問題で、良識や堅実さを受験生に求めてくる。一方桜蔭は、<記述が主>というスタンスを年々純化させてきて、今年ついに<漢字書き取り以外すべて記述>という地点(受験生・採点者ともにハードなスタイル)に完全到達した。しかも物語問題の最終記述は250字! 男子校でも滅多にお目にかかれないボリュームである。この最終記述は05年から本年まで、150字→250字→250字と推移してきた。「受験生の読解力・記述力をこれで見極めることができる」……そんな成算が学校側に定着しつつあるのだと察せられる。本文を読み解く力・使いこなせる語彙の質量・ねじれがなく説得力のある文章作成能力……全部そろわないと、採点者を納得させるような記述は難しい。本文の主題をどれだけ掌中に収められたか。それが解答用紙に如実に表れてしまうオソロシサを、今後の桜蔭受験生も肝に銘じなければならないだろう。出典題材を見てみよう。 〔一〕は『畑の向こうのヴェネツィア』(06年6月刊・白水社)中の「もう一つの母国語」から。筆者の仙北谷茅戸(せんぼくや・かやと)はヴェネツィア大学の東アジア学科でイタリア人や日本人とのハーフに長く日本語を教えてきた職業婦人。イタリア人の夫を持ち、娘(安奈)と息子(ダリオ)をイタリアの片田舎で育てている。イタリア文化とイタリア語に漬かった暮らしの中にあっても、子どもは自分の母国、日本につながっていてほしいとの思いがある。我が子に日本語を学ばせた「特訓」の経過や成果をつづった文章は、自ずから日本語を再考する構造となっている。中でも「お母さん、ダリオがね、あたしの髪を引っ張りたいの」「ちがうよ、そんなものしてないよ」という姉弟げんかは興味深く、筆者がどう口をはさんだのかを記述させる設問はワザあり。ヴェネツィアものの随筆では須賀敦子が著名だが、この題材は去年の新刊本で、新聞の書評で好意的に紹介されている。「できれば新刊から出したい」という出題者の意向にかなったのだろう(桜蔭の過去4年間は物語がほぼ新刊)。 〔二〕は『星兎』(99年5月初版・パロル舎)から。作者の寮美千子は、変わった経歴の持ち主。まず外務省勤務→広告コピーライター→童話作家→作家(第33回泉鏡花賞受賞)。併行して、衛星放送ラジオ局セント・ギガに600篇もの詩を寄せた詩人でもある。97〜98年には科学技術庁「宇宙開発委員会」専門委員を務め、03年に小惑星8304が「Ryomichico」と命名登録された……という自分の名の「星」を持つ人。本作は等身大のしゃべる『うさぎ』と少年ユーリとの、リリカルかつ存在の宇宙的孤独が漂うメルヘン。宮澤賢治『銀河鉄道の夜』やサンテグジュペリ『星の王子さま』を連想させる雰囲気もある。この現実離れしたお話の核心に、どこまで迫り、250字記述をしたかが受験生の大きな分かれ目だったろう。 理科
かつての桜蔭理科に比べれば、はるかに「フツーの入試問題」(ちなみにこれは「ほめ言葉」のつもりです)になったが、算数の問題に比べれば、ずっと「フツーの入試問題」(これは皮肉)に近い。 とはいえ、単純な1問1答式の知識問題は少ないため、マトモな受験生とトンデモ受験生のあいだでは、しかるべき得点差がつくだろう。 〔1〕 断熱膨張の簡単な実験を提示し、そこから雲のでき方についてのさまざまな設問が続く。問2の「黄砂」を答えさせる問題と、問5の「雲が垂直に発達しやすい条件」がちょっと目新しいところ。問3・4の「飽和水蒸気量」と上昇に伴う温度変化は、フェーン現象との絡みで他校でも頻繁に出題されているので、ここでつまずく受験生は少ないだろう。 〔2〕振り子の運動に関する実験結果の読み取りと計算問題。これも見飽きた問題だが、問5・問6の「記録紙を送る速さ」をかえた場合の実験結果を問う問題はやはりちょっと新趣向。それ以外の設問は絶対に落とせない。 〔3〕前半部分は、ラッコの乱獲による自然破壊を、「一定面積あたりのコンブの数」「動物が海底表面をおおう割合」「一定面積あたりのウニの数」「一定面積あたりのウニの重さ」という4つのデータの比較から解き明かしていく問題。「ラッコは大きいウニを食べる」→「ラッコの乱獲により、天敵のいなくなったウニが大繁殖する」→「ウニのエサであるコンブの数も減る」という流れなのだが、設問が親切なので、ウニやラッコの生態についての予備知識は必要ない(ちなみに「コンブが減る」のあとに「コンブを主食とするステラーカイギュウが絶滅した」という、聞くも涙・語るも涙の物語があるのだが、こんなことを知らなくても問題は解ける)。「乱獲前のA島」と「乱獲後のB島」の実験結果と比較して「乱獲後、回復途上のC島」の結果を選ばせる問題はなかなか面白い。 後半は森林内部に道路を通すことによって「林縁」が増加し、道路そのものの面積はごくわずかであっても「本来の森林」が大幅に減少することを確認させる問題。ネタ的には面白いが、設問そのものはカンペキに算数。ただしラッコ・森林とも、凡百の知識問題の羅列が多い生物分野の出題のなかでは、骨太でよく工夫されている良問といえよう。 〔4〕「川が強酸性であると、自然と建造物(ダム)にどういう悪影響を与えるか」の12字記述があり、逆に化学計算が1問しかないところが、例年とは若干雰囲気が異なるが、問4・問6の「すべて選びなさい」がちょっと意地悪な程度で、あとは全問正解が当り前。 というように、やっぱり「フツーの入試問題」なのだが、極力「丸暗記・詰め込み型」の知識問題を排除し、本来の理科の学力(自然科学や環境問題に対する関心・データの読み取り・計算処理など)で判定しようというマジメな出題姿勢にはとても好感がもてる。 ただし桜蔭受験生の学力レベルを考えると、もう1ランク、難易度を上げてもよいのではなかろうか。 社会
昨年同様大問数が3題だが、解答数は10以上増えた。記述も2問から4問になったものの、選択肢の設問で曖昧なものが少なくなり、むしろ解きやすくすらなっている。記述以外では、語句を解答するものが8問、残りはすべて記号選択式という設問形式。 〔一〕は「九重町」が取り上げられている。リード文の中にある「くじゅう連山」から、この町が大分県にあることを推察した上で、問9「九重町が県内1位の生産高をほこる農産物の加工品」とは何かを答える。大分県が分かったところで、「干ししいたけ」と答えるのは難しい。細かいところまで訊いてくるのは、例年のこと。問3で、平成の大合併の結果、全国の市町村の数がいくつになったのかを選択肢から選ぶという設問で確信を持って解答を選んだ者たちがどれほどいたのだろうか。このあたりはとにかく答えを書いて前に進む。記述も同じ。雪が「冷たい熱エネルギー」と呼ばれる理由を「使いみちをあげて説明」する。これは理科の問題? 解答は「冷熱エネルギーを利用して、建物の冷房や農作物の冷蔵に使われるから」あたり。おそらく正答率は高くはなかろう。妙に細かかったり、難しかったりする設問はうっちゃって、基本的な設問で確実に得点を重ねることが肝要というもの。30分という時間を考えるとスピード処理が求められる。解答を書く前の吟味、時間が残った場合の見直し。これが大切。 〔二〕は祇園祭りを扱ったリード文。その中に引かれた13の下線部から出題される。「平清盛が源頼朝の父を破った戦い」、「鎌倉時代の農業の発達」、「鎖国」、「人形浄瑠璃の作者」等々について、選択肢から選ぶ。設問によっては、例年通り「すべて正しい場合は え と答えなさい」が健在だが、今年は選択肢の正誤がはっきりしているので、戸惑うこともない。空欄補充や一問一答式で「桓武天皇」「源氏物語」「応仁の乱」「全国水平社」を答えさせるが、これらは基本。記述は2問。「ひらがなが生まれるとなぜ文学が発達したか」、「ひらがな以前はどのように文章が書かれていたかにも触れて」説明する。「漢文」が使われていたことと、ひらがなを使うことによってこまやかに感情を表現できるようになったことを書けばよい。もう一問は「山をけずって作られた鎌倉に入る道」として、「切通し」と答えた上で、この道が「馬1頭が通れるくらいの幅しかない理由」の説明。「敵の侵入を防ぐため」といった内容を書くのだろう。共に平易だし、記述が点数を分けるとか記述の練習を云々というレベルでもない。 〔三〕は公民分野・時事問題(「2006年」ではなく「2005年の出来事」が取り上げられている)の正誤問題。4つの選択肢から「誤っているもの」を選ぶ。「ハートビル」とは何かを知らないと判断できない設問等もあるが、これには拘らないことが必要。とにかく答えは書くこと。 対策としては、基本を徹底的に定着させることに尽きる。そして、試験中は曖昧な設問にいちいち拘泥せず、とにかく先に進むこと。得点できるところを確実に得点すること。つまりは、ミスをしないこと。社会で足を引っ張られるようではいけない。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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